お洒落なんて嫌いだった。
「女の子なんだからもっと見た目に気をつかえ」「お洒落しないともったいない」と散々言われ、言われると尚のこと頑なになっていた。
「何が女の子なんだから、だ。顔に粉を塗りたくって何が楽しいんだ。服なんて着られたらいいだろう。人間は中身が大事なんだ」
と言われるたびに言い返していた。
特にお洒落をしないで困ったこともないし、ブスブスと他人に言われるほどでもなかったし。今お洒落をしだして良かったことも特にない。
典型的な下半身デブで尻や胸も大きく、顔にはにきびがたくさんあって、鼻は毛穴が広がりが目立つし脂っぽい。
それらを見るたびにため息ばかりついていた。おしゃれそのものを放棄してしまったほうが楽だった。
胸が大きいとどうしても着る服が限られるし、どんな服を着ても野暮ったくなってしまう。雑誌のモデルはみな胸が小さいでしょ?
今でも思っていることだが、おしゃれを楽しめる人間は多少の自信がある人だと思う。何故なら、おしゃれは自分と向き合うことだからだ。
まあ、自称お洒落な人でも効果があるかどうかもわからないサロンや、たっかい基礎化粧品に金をつぎ込んでいたりするけどさ。
わたしがお洒落をしだしたきっかけは単純で、好きな人ができたからだった。
それもお洒落な男性だった。だから、ちょっとでも自分を良く見せるために化粧品や服を買い漁り、勉強もした。
はじめは手探りだったけど、今じゃ自分が似合うスタイルを見つけてはいる。
似合うスタイルっていっても、元々が芋女だからたかがしれているのだが。それでも昔よりかはマシじゃないだろうか。
でも、今になって、もっと早くにお洒落をはじめていればと思う。
一からおしゃれをはじめるのは大変なのだ。お金がすごくかかる。女性用の服が安いと言っても一着三千円はするから、着回しを考えたらいい値段するし、
化粧品はもちろん、基礎化粧品や靴や美容院代など、毎月ばかみたいに金がとんでいっていた。
嫌々していたおしゃれが、次第に楽しくなった。
服も似合う服に巡り合えたら嬉しいし、コスメ売り場のきらきらした空間も楽しい。コスメ自体も乙女心をくすぐるデザインのものが多くてわくわくする。
これでようやく人並み以下くらいにはなれたと思った。けれど、元々お洒落な子には敵わない。
わたしがおしゃれを放棄してアニメを見ていた間、彼女たちはおしゃれの勉強をしていたのだから、そりゃあ違って当然だ。
自分の努力不足だけなら、納得もできる。多分、わたしが無力感を持った理由はそれだけじゃない。
なんだろうな、彼女たちとは顔や体の素質が違う気がするのだ。
わたしじゃ、どんなに頑張ったって彼女たちみたいにキラキラできない。
基礎化粧品に万かけても、デパコスのコスメをそろえても、もともと肌がきれいな人には敵わない。
どんなに雑誌を読んでコーデを勉強したって、元々胸や尻が小さくて細身の人には敵わない。
骨格や体型はダイエットじゃ限界がある。肌質だって、多少は改善するかもしれないけど……。
そう考えると、おしゃれが虚しくなる。
「デパコス買うなんて、ただの無駄遣いじゃない? わたしみたいなブスはプチプラでも変わらないでしょ」
別におしゃれしたからって、周りの反応が変わるわけでもないしね。ちょっとナンパされる回数が増えたくらい? でもブスだってナンパされるでしょ。
こんなこと、いつもは考えないようにしてるけど、何故かふと感情が湧いて出た。
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