2013-02-12

「早く○○君の彼女が見たい」

1年ぶりに友人と会った。2人で会うのは2回目。

適当駅前でご飯を食べて、友人の運転でドライブして、ぶらぶらして、そして別れた。

食事をしている時、車で移動している時、ぶらぶら散歩をしている時。

何度も言われた。「早く○○君の彼女が見たい」。


それが彼女の答えだったのかも知れないし、天然気味で軽くアホの子だったので本心だったのかも知れない。

彼女には彼氏がいる。聞けば結構な年上。小学校1年生と高校生ぐらい違う。

「意外と年上好きなの」。ああそうかい

結婚の話もちらほらしていたから、順調にいけば彼女はその人の妻になるのだろう。

順調そうだ。


学生時代、同じサークルで4年間を過ごして、就職して住む場所がバラバラになった友人。

学生時代は仲間の一人だった。他の仲間と一緒につるんで、それなりに健全学生生活を謳歌した。

初めて会ったのはサークル新歓。8年ぐらい前のことなのに非常によく覚えている。

大人びた雰囲気を出してるのに、話してみるとどこか子供っぽい。

しっかりしてそうなのに凄く危なっかしい。それでいて本人あまり自覚がない。

兄弟が多いせいか妙に男慣れしてる。そのせいで当時の彼氏によく怒られてた。「無防備」だって

その彼氏も俺の友人。

今でも彼女は変わらない。

普段電話メール殆どしないのに、

突然新幹線で遥々会いに来た男と平気でご飯を食べて、自分の車に乗せてドライブして、2人で並んで歩いて。


正直に話してしまえば、どこかくだらない期待をしていた。

1年前、似たような感じでのこのこ会いに来た俺は、彼女から学生時代彼氏と別れたこと、職場の人と付き合っていることを

サラっと聞かされていた。

からもう会えないと思った。

彼女は気にしてないようだったが、遠恋なのを良いことに、彼女浮気させているようで、彼氏さんに凄く申し訳なかった。

学生の時だってそうやって距離を取ってたんだ。すぐ近くにいてくれるのに踏み込んではいけない壁をずっと作ってきた。

友人にも申し訳なかったし、同じサークルの中で、くだらないことで先輩や後輩に迷惑をかける訳にはいかない、と思っていた。

況や、今の相手は30代半ば。

その年で、同じ職場彼女と付き合っているということは、かなり真剣に、結婚を考えて付き合っているんだろう。

からもう会ってはいけない。そう誓ったはずだった。


でもまたやってしまった。本当は断って欲しかったのかも知れない。というか断って欲しかった。

いっその事「苗字が変わりました」ぐらいの連絡が欲しかった。

3ヶ月ぶりぐらい?に送った、俺のどうしようもなく未練たらしいメールに帰ってきた返事は、

喜んでいいのか、悲しんでいいのか。全くもって分からないくらい、

妙に明るい文面のメールだった。

昔と本当に変わらないなと思った。


当日はそれなりに楽しかった。

知らない土地を歩くだけでも楽しかったし、元々彼女と話すのが僕は好きだったし、

一応同じサークルということもあって趣味共通点もある。当時の思い出話もできるくらいの年にはなった。

今の仕事の悩みとか、愚痴とか。そういうことも沢山聞いた。

元々おせっかいな僕は、またおせっかいアドバイスをして、彼女はそれを大体適当に聞いていた。

からそうだ。僕の話なんてろくすっぽ聞いちゃいない。自分が話すのが要するに主な目的なのだ

それでも楽しい

隣を歩く彼女は凄く綺麗だった。学生時代よりもずっと綺麗になった。

夕陽を浴びたはっきりした顔立ちの横顔は何かの映画のワンシーンのようで、本当に溜息が出た。


ずっと見ていたかった。

ずっと彼女の隣で。手を握りたかったけど、流石にそんなこと言えるわけがない。

この時間場所を共有していることこそが、もはや罪なのだ

自分が得られるはずのないものなんだ。

自分はそれを、勝手に借りているだけだ。

全て俺の為じゃない。

彼氏さんの為に磨いた彼女の「女」を横で垣間見ているだけだ。


なんだかんだでほぼ1日一緒にいた。

夕刻、僕は一人新幹線東京に帰った。

自分馬鹿さ加減に呆れながら、信じられないくらい楽しかった時間の余韻に浸って、

ああでも明日火曜日だよねと、平日だよね、と仕事のことを頭のなかでどこか考えて、

現実に戻るための努力をしていた。


そんな日。

神様だか仏様だか、とにかく何か分からないが、何のために俺にこの1日を与えてくれたんだろう。

クソ真面目につまらない人生を歩んできた俺に浮気スリルでも教えてやろうと、つまらない気まぐれを起こしたのだろうか。

でももう大丈夫

友人の答えを聞けたから。ちゃんと「断って」くれたから。

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