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コンビニたそがれ堂 空の童話を読んだ。大人のためのファンタジーって感じの小説だった。物語が交差しているシリーズが多すぎるのが財布に痛いところ。
このシリーズを始め、村山早紀の小説はちょっと過剰なくらいに優しい雰囲気を醸し出しているのが特徴だと思う。文体が効果を発揮しているせいだと思うし、話の内容も人の優しさや思いやりや願いを中心に据えているからなんだろう。
そのため、その時々のコンディションによって読書感が大きく変わってくることがある。もちろんどんな小説でもそうなんだけど、基本的なスタンスが変わらないのにシリーズがたくさんあるから、内容に対する感想の変化を顕著に感じられるのだと思う。結構前に読んだコンビニたそがれ堂の一作目なんか、過激なところや傷つけたり傷ついたりするギズギズした箇所がなかったから物足りなく感じてしまった。今はその物腰の穏やかさこそが一番の味わいなんだと思うってるけど。
さておき空の童話の感想について。空の童話という架空(たぶん)の本を共通項として取り扱った小説集だった。キーワードは他にもあって、クリスマスとタイトルにもなっているコンビニ。
神様が出てくる小説なんだけど、その活躍っぷりが控えめで、あくまでも生きている人々の意思を尊重しているところが好意的に感じられた。キャラクターの個性もいい感じに出ているていいと思う。二つ目の話に出てくる隣人の獣医さんとか、三編目の空の童話に出てくる店長と奥さんとか、脇役がちゃんと立ち位置を定めているのが素敵だった。
他にも悪の秘密結社の重役とか宇宙人とか植木鉢から生えてくるおやゆび姫とか、イロモノもちょくちょく登場してくるんだけど、街の溶け込んでいるのが面白いところだと思う。いかにもなキャラクターが普通に生活している様を、取り立てて際立たせようとしていない、むしろ意識してなだらかに表現しているところがこの作品の丸みに繋がっているんだろうな。
ただエピローグにはやられてしまった。桜並木に現れた子どもたちの姿が描かれた時、少しうるっと来てしまった。くやしい。狙いすました内容だったのに。
面白く読めたし胸が暖かくなる小説なんだけど、冒頭にも書いたように様々なシリーズを横断して人物が登場しているところが個人的に少し困る。
今シリーズを始め村山早紀は風早という架空の街を舞台にした小説をいくつも執筆しているのだけれど、ところどころクロスオーバーしているようなので気になって仕方がない。海馬亭通信とか読んだはずなのに内容を覚えてないし、天空のミラクルってシリーズがまた始まってるし、竜宮ホテルもカフェかもめ亭もコンビニたそがれ堂も読めて無いシリーズがあるし、花咲家の人々に至っては買ってもない。すごく気になる。
なんかまんまと踊らされているような感じがしなくもないけど、ここまで集めてるんなら全部網羅してやる。
「檻の外」けっきょく買って読みました。これ2冊併せて読んだほうがいいわ、間違いなく。
最初はまたホラー来た!と思ったけど、そんな単純じゃないですねコレ。
こんな痛くて昼メロみたいな展開なのに、煽りなしで淡々と、それでいてメリハリつけて語れるのはすごいと思います。
「十六になったら俺にくれ」のところとか、花冠のところとか、ひとつひとつのシーンも、ぐっとくるとこありました。
これは人に勧めたくなるのもわかる気がします。
正直、よくわからん! けどブリッジとしてはあるべきものなのかな、と思いました。
このままピュアフル文庫のアンソロジーに入っててもいいくらいの清々しさ。
前作とあわせてのチルアウトというかクールダウンというか、そういう感じ?
この作者さん、「痛い」タイプの作品が多いんですよね。
BL以外も書いてくれとは思わないけど、こういう読後感いいやつは書いてほしいなあ。
すごいちゃんと書いてるなーと思ったのは、メインの二人がきちんと年を重ねているのが伝わってくるところ。
イニシエーション的にひとつの事件を超えて成長したり変貌したりっていうのはよくあるけど、
何年もかけていくつもの小さな出来事を超えてきてるっていうのを感じるのはそうそうないので、
やっぱり力のある人なんだな、と思う。
「箱の中」だけで止めてたらしばらくBLに手を出す気にはなれなかったと思うので、