数日前、朝起きると先に起きた妻から亡くなっていることが告げられた。
ショックを受けたことは間違いないが、そこまでの数日でかなり弱っていたことを思うと、ついにかあ…というのが正直な気持ちだった。
明日、永遠のお別れになるので、彼女との思い出を忘れないように吐き出させてほしい。
独身時代に一度飼っていた妻の誕生日プレゼントとして、お迎えしたのは2020年の春頃。ブラウンカラーで脇に白い模様があるキュートな女の子である。
当時、子供はいなかった我々夫婦は彼女に一瞬で虜になり、毎月のように写真を撮影し、妻はインスタなんか始めたりと、かなり浮かれていた。
比較的温厚な彼女は人が近づいても針を立てることなく抱かせてくるのも魅力の一つだった。
近くの公園に出かけたりもして、近くにいたマダムからひそひそされたりもしたが、その時撮った写真はしばらくPCの壁紙として活躍した。
当時借りていた家の更新が来たのにあわせて引っ越してからすぐ妻が妊娠した。
そこからはどうしても子供が優先となり、彼女と遊んだり写真を撮ったりすることがめっきり減ってしまった。
子供が生まれてからも状況は変わらずだったが、初めて対面した二人はお互いに不審がりつつも泣くことも怒ることもなく興味津々という感じだった。
そんな息子も今ではすっかり走り回り、彼女の名前を呼べるようになった。
遊びながら彼女のケージを覗いたり、ハリネズミの絵本を指さして彼女の名前を呼んだりと、すっかり浸透している。
異変に気づいたのは1ヶ月ほど前だった。日々の日課となったケージの掃除の際に血痕が目立つようになった。
血の量は日に日に増えていき、不安を覚えたものの、餌が食べれていたこともあって、特段病院に行くということもなかった。
しばらくするとその血が口から出ていることがわかり、おそらく歯周病なのでは?という見立てを立てた。
病院につれていくことを提案したが、その時点でだいぶ弱っていたのもあり、そのままゆっくりさせたいという妻の意見を尊重した。
そこから2週間ほどはなんとか餌を食べているという状況だったが、最後の1週ほどは水しか飲めず、ラスト3日間はふらついて歩くのもやっとという状況だった。
彼女の誕生日は2020年1月なので約4年ほど生きたことになる。いつも考えていたが、彼女は果たしてうちにきて幸せだったのだろうか。
他の家にもらわれる世界線もあったはずで、我々としては精一杯やったつもりだが、もっと幸せに長く生きられた可能性もあったかもしれない。
でも、少なくとも我々一家は彼女が来てくれてとても嬉しかったし、楽しい4年だった。
自分としても大きく人生が動いた4年でもあるので、それに彼女がいたことはとてもいい思い出になるだろう。
さんざん寝ているときに覗いたり、掃除のために起こしちゃったりしてごめんね。お空でゆっくり寝てたくさん遊んでね。今までありがとう。