2023-03-12

就職氷河期サバイバーとしてのひろゆき

ひろゆき論(https://websekai.iwanami.co.jp/posts/7067)を読んで、ひろゆき根底にあるものがなんとなく分かった気がする。そして、リベラル派に対する冷笑的な態度の理由も。

就職氷河期世代は、1990年代後半から2000年代前半にかけてのバブル崩壊後に就職した世代を指す。日本社会において若年層が深刻な雇用不安に直面した世代だ。このような世代が生まれた背景には、バブル崩壊による経済の停滞や、企業正社員採用を減らし、非正規雇用を拡大したことが影響している。いわば日本的システムを維持するために若年層が切り捨てられた世代だ。

就職氷河期世代にとってリベラル派は何の役にも立たなかった。氷河期世代は長期にわたって雇用不安低賃金非正規雇用などの問題に苦しんでいた。しかし、リベラル派の寄り添う「福祉国家論の立場」も「アイデンティティポリティクス立場」も自分たちを救うものではなかった。彼らにとって、必要だったのは、より実用的な解決策だった。

日本社会によって切り捨てられた世代にとって「プログラミング思考」は処世術だった。「オワコン」の日本をどうやってハックし、ショートカットできるのか。インターネットを中心としたIT業界は、既得権益層のいない能力次第で成功できる業界であり、就職氷河期世代にとって救いとなっていた。

ひろゆき世代体験は、同時に「失われた30年」を現在進行形体験している彼の支持者にとっての処世術にもなっている。「オワコン日本自分たちを救ってくれる存在ではない「情報強者」となって、「集団としての権利よりも個人としての利益を得るために立ち上がるほうが、やる気も出るし、現実的だ」。

著者の結びにある「プログラミング思考を追い求めていけば、いわゆるシステム思考に行き着くはず」という主張については良く分からないものの、ひろゆき支持者が「自己社会の複雑さに目が向けら」れていないという主張については首肯できる。

しかし、この現代社会では、自己社会の複雑さに目を背け冷笑することしかできないというのも、事実なのだろう。

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