ロシアには、他国による参戦を阻止するための警告として核兵器を使う「エスカレーション抑止」という戦略がある。
例えば、ウクライナの防衛に米軍が参戦しそうになった時に、直接の被害の少ない場所に、核兵器または強力な通常兵器を1発だけ打ち込んで、もし参戦したらこれを打ち込むぞという脅しをかけるという戦略だ。これは脅しなので、民間人に大きな被害が出るような場所は選ばない。そんなことをすれば逆に参戦を促してしまうからだ。
脅しの程度として弱いが比較的安全なのが、公海だろう。誰も見ていなくてもミサイル発射や核爆発はすぐにわかるし、国民に知らせる事になるだろう。ヨーロッパの先にあるロシアが、後ろから太平洋に攻撃してきたら、米国市民はビビるのではないだろうか。
強い脅しになるがリスクが高いのが、米本土への攻撃だ。アラスカであれば人口密度が低くロシアからも近いので、被害を少なく攻撃するのは容易だ。だが本土を攻撃されてしまっては、米国市民も覚悟を決める可能性が高い。そうなってしまえばエスカレーション抑止としては失敗だ。
この中間にあるのが、米国の友好国内の被害の少ない地域への攻撃だ。これのリスクはその友好国の参戦リスクと米国との親密度による。これは「脅し」であるのがはっきりしているので同盟はあまり関係ない。友好国が参戦した場合に同盟によって米国が巻き込まれる場合、参戦しないように圧力をかけられる可能性すらある。ロシアとしては米国・友好国ともに参戦してこない場合が成功、友好国が単独参戦しても十分抑えられる場合が許容範囲となるだろう。
この対象として日本が選ばれるリスクは高い。その中でも北海道はロシアとの距離・人口密度ともにやりやすく、米軍基地があるために米国への脅しとしても十分だ。参戦されると痛い戦力は持っているが、日本から参戦してくる可能性は他国と比べると低い。
もしこれを実行する場合、ロシアは日本と米国の親密度を下げる工作をしてくるだろう。すでにロシアは北方領土を使って日本人の怒りを高めている。これ単独では大したことはないが、冷静さを失えば中を引き裂くのが容易になる。今の政府は核共有は議論すら拒否しているが、これが核開発までエスカレートすると危険だ。米国は確実に反発する。ロシアとしても、ウクライナへの攻撃理由に(誰も本気にしていないが)ウクライナの核開発疑惑が含まれているわけで、日本が核開発をすすめる素振りでも見せれば大義名分を得たと思い即座に動けるだろう。