http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170208/k10010869281000.html
blueboyですらまともなことを書くほどひどい。
問題を混乱させるのが、「インフルエンザ脳症」という疾患定義だ。これ、アメリカの医学教科書(つまり世界最高レベルということになる)には書いてない。「インフルエンザの合併症としての脳炎」とか「中枢神経合併症」みたいな書き方。向こうで、日本におけるインフルエンザ脳症と同様の重症感を持って語られていると思われるのは「ライ症候群」。「ライ症候群」は致死的な脳炎+脂肪肝炎などを起こす。死亡率が非常に高い。そしてアメリカでは、ライ症候群発症とサリチル酸投与との関連が指摘されたため1980年頃にインフルエンザの時にサリチル酸(つまりアスピリンとか)を使用することについての重大な注意喚起をしたところ、撲滅された、とされている(Belay et al. NEJM 1999.)。
「インフルエンザ脳症」なのか脳炎なのかわからないが、インフルエンザの脳の合併症は、現在のアメリカではまれなのだそう。例えば、神経系の合併症を併発するインフルエンザの発症率(罹患率)は10万人年あたり4人程度とされ、そのうち脳症は10%程度、調べたデータの842人のインフルエンザによる入院患者(アメリカでインフルエンザで入院、って時点で相当重症ってこと)の中で死亡例ゼロ(Newland et al. J Pediatr 2007.)。あるいは2009年のH1A1パンデミックの際、中枢神経系の合併症は8.8%(これは多い!アメリカでインフルエンザを検査で同定した患者というわけで重症感のある患者群ではあろうがそれでも多い。さすがパンデミック)、しかし死亡例はゼロ(Wilking et al. Pediatr Neurol 2014.)。
たまに日本の医者で、「アメリカ人と日本人は違うのだ」みたいな話する奴がいるが、冷静に考えてアメリカには数十万人の日本人がいるわけ。そのアメリカの日本人も無事なのはなぜ??
基本的によく調べられていて悪いのはアスピリンとされるが、薬学的にそんなに変わらないので、アセトアミノフェンを除くその他のNSAIDsと呼ばれる鎮痛剤も全て欧米ではインフルエンザには禁忌。
そうだ。僕はこういうことを書いているくらいだからMDなのだけれど、これは冷静に考えて日本の医療界の犯罪的な状況だと思われる。インフルエンザにNSAIDsなんて絶対出しちゃいけない、出さなくてアメリカでは死亡するほどの脳症が撲滅されたとBelayらが報告している。別にアセトアミノフェンならいいって言ってんだからアセトアミノフェンにすればいい話なのだ。量的リスクが十分わかっている劇症肝炎(アセトアミノフェンの副作用)を恐れているのか?いや、そんなことすら知らないだろう。何も考えず「ブルフェン」とか出してんのだ。ありえん。
市民団体は、ワクチンとか放射能とかくだらないこと言ってる前に、発熱・風邪の時のNSAIDsの全面禁止を訴えるべきなんだ(インフルエンザかどうかなんて特に早期は必ずしもわからないので、季節性の感冒っぽい症状の時は全面禁止すべき)。
市民団体はイギリスのワクチン反対運動とかそういうの見てるだろう。でもね、欧米ではすでに市民団体がどうとかする前に策が講じられているようなことを日本では見過ごされていて、しかも死に至るものがある。忘れちゃいけないが、どっちだかわからない(多分関係ない)ワクチンなんかより、明らかに科学的に誤りであるインフルエンザ時のNSAIDs使用の方が大罪であり、それを見過ごす医師系の団体も大罪であるが、市民団体も何やってんだというところなのだ。
解熱剤に問題はなかったんだーってなってる奴だらけじゃねーか ほんとブックバカーは馬鹿ばっかだな