20日に米国大統領の職に就いたトランプ氏の独走が続いている。いくつもの大統領令にサインし、直近のニュースでは その反発として、メキシコ大統領との会談は流れ、自国の司法省長官代行からはNoを言われ、海外の複数の国から「懸念」を表明されている。
昨年7月トランプ氏が共和党の大統領候補になった時 いったい何人の日本人が、この(政治経験ゼロで女性蔑視・人種差別発言を繰り返す)人物が米国の次期大統領になると考えただろうか? しかしそれは現実となった。
大統領選翌日のことだ。
私は前日の選挙の行方をネットでは見ていたのだが、一連の流れをいまひとつ現実のものとして捉えることができないでいた。
いつものように市場へ行くと、その中央付近に新聞スタンドが在るのを思い出しそこへ足を運んだ。
そこには同氏の勝利を伝えるいくつものニュースペーパーがきれいに配されていた。
それを見た私は人生で初めて、何かを見て眩暈をおこす、という経験をした。
得意顔のトランプ氏が大写しになったそれは、どう見ても出来の悪い三流映画の小道具にしか見えなかったのだ。
ここはどこだ。 世界が横滑りして、別のどこかに雪崩れ込んでいくような感覚。
ここは本当にフィリピンか? 本当に世界と繋がっているのか? ネットの情報も含めみんなで騙しているんじゃないのか?
頭がクラクラしている。
ダメだ、何でもいい、何か考えなくては、と思ったところに新聞の見出しが目に入ってきた。
偶然か、ニ紙がその見出しとなっていた。
英語初学者の私はその O M G というちょっと見慣れない略語について考え、後ろのTrumpという固有名詞を頼りに、もしかして「オーマイゴッド」の略!?と閃いた。
答え合わせをするために店番の女性に何の略か訊いてみることにした。
しかしその女性は新聞を取るなり本文とにらめっこを始めて、一向に答えが出る気配ではない。
客として訪れた男性に改めて訊いてみたところ、やはりオーマイゴッドとのこと。
オーマイゴッド…
私の中に現実感というやつがあるとするなら、それは明らかに退潮していった。
私がまっすぐ歩けないほどの高熱を発し、隣市の公立病院へ行ってデング熱と診断されたのは その数日後のことだった。
あのクラクラがデング熱の初期症状に拠るものか、トランプ氏の「歴史的」勝利への不適合からきたものか、今となっては分からない。
分かっていることといえば、破天荒な大統領とそれに相応しい政令が当面の間続くということだけだ。
ネットの情報に拠るとデング熱は回復後も数週間にわたって疲労感、倦怠感、現実感の無さが続くことがあるらしい。
お〜い、私の現実感〜、早く戻ってこ〜い