2023-05-23

オタク推し燃ゆを読んだ

なんか朝起きたらとんでもなくめんどくさい仕事の連絡がきていて、ああ、って思った。

からミーティングがあったのでそれだけこなして、今日はもう仕事はせず、PCの画面すら見たくないと思った。

出かけようかとも思ったけど雨だし、お金もないのでずっと積んでいた本を読むことにした。

買うだけ買って、ビニールすら剥がしていない本がいくつもある。

とりあえず、以前数ページだけ読んだまま放置していた「推し燃ゆ」という作品に手を伸ばした。

推し炎上から始まる、1人の女の子人生の話だった。

私は女性地下アイドルオタクだ。コロナ流行って現場が無くなった頃からVtuberも見ている。

から、というわけではないが、界隈の特色もあって私自推し炎上するいう経験は何回かある。

ここから先は本編のネタバレを含む内容。

感想を率直に述べるとすれば、「私はまだ大丈夫な方だ」だった。

主人公はおそらく、ADHDの診断を受けているのだと思う。

作中で明確な病名が明かされているわけではないが、病院で言われた、人と同じようにできない、という描写からそのように解釈した。

じゃあどうして私がそのような感想に至ったかというと、自身も似たような境遇にあるからだ。

数年前、躁鬱の診断を受けた。

ADHDも躁鬱も、レントゲンを撮ったり、血液検査をして明確なエビデンスの元下される診断ではない。言って仕舞えば、患者気持ち問題だ。

実際、病的なまでに人と違う点があるのだから病気”とされているが、気持ち問題が含まれるために世間から理解も乏しくなってしまうのだと思う。

重要になってくるのは、その病気に対してどう向き合うかだ。

この作品主人公は、どうも病気に甘えているような印象を受けた。

わたし病気から仕方ない。そういったニュアンスの心情描写が何度も見受けられる。

かに病気から仕方ないところはある。努力してもどうにもならないことはある。

けれど、そこで「私は病気から」何もしなくていいというわけではないのだ。理解を得たいのであれば努力をしなければならない。

最近、心の病気に対する世間認識は徐々に変わってきているように思う。少しずつではあるが、確実に、理解を得られるようになってきている。

しかし、日本社会は甘くない。

世間から認めて欲しいのであれば、病気だろうがなんだろうが努力するしかないのだ。

趣味を全うしたいのであれば、それ相応の働きをしなければならないのだ。

好きなことだけやって、やりたくないことはやらない、なんてことは現代日本社会ではまず許されることではない。たとえ病気だったとしても。

努力なんていうものは、尺度ベクトルも人それぞれだ。

自分がどんなに自分なりに努力していたって、世間から認められないのであればしていないのと同じになってしまう。

では、努力を人に認めてもらうにはどうすれば良いのか。

回答は明快だ。「世間尺度に合わせれば良い。」

作品の後半で、主人公高校中退してしまう。

この作品だけ読めば、まるで推し炎上きっかけに人生が壊れていくさまを描いているようにも思うが、登場人物人生だって地続きだ。推し炎上してもしなくても、同じ結果だったのではないかと思う。炎上は時期を早めただけだ。

中退した後、主人公家族から就職をするように言われる。

それを言われた主人公は、数ヶ月の間で数社の応募をしたのだという。

数ヶ月の間で数社、というのは世間尺度で見れば到底努力しているとは言えない数だ。もしその状況を正当化させたいのであれば、相応の理由がなければならない。

だって人間だし、親だって生きるのに金がかかる。無償の愛などこの世には存在しない。

この本の帯に、このようなコメントが添えられている。

未来考古学者に見つけてほしい。時代を見事に活写した傑作。」/朝井リョウ

この感想を得た朝井さんがどの部分に「時代」見出したのかは定かではないが、私はこのコメントを見て酷く納得した。

かに推し炎上」という題材はこの令和ならではだと思うが、この作品が打ち出す「時代」というのは、今回つらつらと書いた精神疾患の方にあるのではないかと思う。炎上は、そのテーマを引き立てるためのものしかない。

からあった病気ではあるのだろうが、その存在が明るみになり頻繁にメディアで取り上げられるようになったのはここ数年のことだと思う。

世間から理解を得難い病気を患ってしまった自分が、どのように世間と接していけばいいのか。そういった教訓が、この本に描かれているのだと私は解釈した。

私は今日仕事からの逃避をするためにこの本を手に取った。間違いではなかったと思う。

このあとまた、とんでもなくめんどくさい連絡と向き合わなければならない。

しかしそれは給料を得るためだけではなく、己の信用獲得にも繋がるのだと、この記事を書きながら痛感している。

躁鬱というハンデを伝えた上で採用された会社だ。恩がある。

ぜひ、所謂オタクよりも自身ハンディキャップに苦しむ人に読んでほしい。そんな本だった。

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