2015-04-20

靖国ゲームルールブック

はじめに

このエントリーは、「靖国ゲーム」というゲームにこれから参加してみようかな、と思っている人に向けて書かれた、このゲームルールについての解説です。

ゲーム概要

靖国ゲームは、東京都千代田区九段北に設置されている「靖国神社」と呼ばれる施設フィールドとして実施されているゲームです。

このゲームプレイヤーは、「エージェント」と呼ばれます。個々のエージェントは、「守旧派」と「改革派」と呼ばれる二つの陣営のどちらかに所属します。そして、各陣営が望ましいと考える意味をこの施設付与することを目的として、靖国神社という施設において、「参拝」と呼ばれるプレイを実行します。このゲームの戦況は、この施設に与えられたそれぞれの意味の強度によって評価されます

「二つの陣営のそれぞれに所属するエージェントとしてプレイする」と聞いて、Ingress連想した人が多いかもしれませんが、靖国ゲームIngressとの間に似ている点があるとしても、それは表面的なものです。Ingressよりもむしろ靖国ゲーム日本鬼子プロジェクトに似ています。なぜなら、それらはどちらも、意味付与をめぐるゲームからです。日本鬼子プロジェクトが「日本鬼子」という四文字の文字列に対する意味付与をめぐって繰り広げられるゲームであるのと同様に、靖国ゲームも、「靖国神社」と呼ばれる施設に対する意味付与をめぐって繰り広げられるゲームです。

靖国ゲームは、2014年7月5日に開始され、現在継続中です。ゲームオーバーが成立する条件は定義されていませんので、原則的にはこのゲーム永遠に続きますしかし、靖国神社という施設の廃止などの他律的なイベントの発生によってゲームオーバーが成立する可能性は残されています

ゲームへの参加

靖国ゲームエージェントとして参加するためにしなければならないことは、このゲームルール理解した上で、自身がどちらの陣営に加盟するかを決定することだけです。参加に先立って、このゲームに参加することを何らかの機関に対して届け出る、ということは必要ではありません。ただ単に、いきなり靖国神社に来てプレイを実行すればいいだけです。

なお、エージェントは、自身が属する陣営をいつでも変更することが可能です。

陣営

守旧派」と「改革派」と呼ばれる二つの陣営のそれぞれは、「靖国神社」と呼ばれる施設(厳密に言えばその本社)に対して異なる意味付与することを目的としています

守旧派目的は、「戦意高揚のための施設」という意味靖国神社付与することです。この意味は、施設の設置者である宗教法人靖国神社付与したいと望んでいる意味と同じです。もしもあなたが、靖国神社祭神英霊であり、英霊を神として顕彰することは、後に続く者たちに対して、「自分も国のために戦って死ねば、このように顕彰してもらえるのだ」という認識を与える、という考え方にシンパシーを覚えるならば、守旧派に加盟するとよいでしょう。

それに対して、改革派目的は、「平和祈願のための施設」という意味靖国神社付与することです。もしもあなたが、靖国神社祭神平和を愛する空飛ぶスパゲッティ・モンスターであり、この神に平和を祈願することは世界平和をもたらす効果がある、という考え方にシンパシーを覚えるならば、改革派に加盟するとよいでしょう。

プレイ

靖国ゲームに参加するエージェントにとって最も重要プレイは、「靖国神社に参拝するという行為」です。

靖国神社に対する参拝は、その施設に対して意味付与します。付与される意味は、その作法によって異なります守旧派には守旧派作法があり、改革派には改革派作法があります

守旧派に属するエージェントが「戦意高揚のための施設」という意味付与するために参拝で準拠する作法は、「二拝二拍手一拝」です。すなわち、拝殿の前で本殿に向かって、礼を2回して、次に柏手を2回打って、最後に礼を1回する、という作法です。

それに対して、改革派に属するエージェントが「平和祈願のための施設」という意味付与するために参拝で準拠する作法は、「笑顔ダブルピース」です。すなわち、拝殿の前で笑顔で「ピース」と言いながら、ピースサインを作った両手を本殿に向かって水平に伸ばす、という作法です。

なお、どちらの作法場合でも、参拝に際しては、賽銭箱にお賽銭を投入するという所作遂行が強く推奨されます(その理由については「費用」の項を参照)。金額は少なくてもかまいません。自身経済状態に応じて、無理のない金額のお賽銭を投入してください。

また、靖国ゲームにおけるプレイは、参拝のみではありません。「広報活動」、すなわち、「自身所属する陣営への加盟をブログSNSなどで呼びかけるという行為」も、このゲームにおけるプレイです。

このゲームに参加したいけれども、靖国神社から離れた地域に住んでいるために、そこにアクセスするための交通費または時間がないというエージェントは、参拝によってではなく、広報活動によってこのゲームに参加するとよいでしょう。

費用

徒歩や自転車などで靖国神社まで行くことが可能なエージェントは別として、遠方に住むエージェントは、参拝によってこのゲームに参加するために、靖国神社アクセスするための交通費必要となります

また、強制ではありませんが、「プレイ」の項でも述べたように、靖国神社に対する参拝に際しては、賽銭箱へのお賽銭の投入が強く推奨されます。その理由は、このゲームが成立するためには靖国神社という施設存在していなければならないからです。施設を維持するためには、そのための財源が必要です。この施設を維持するための財源としては、これまでは英霊の遺族や戦友から寄付金が大きなウェイトを占めていました。しかし、時代とともに寄付金のウェイトは下がりつつあります。今後は、お賽銭を始めとする社頭収入が大きなウェイトを占めることになるでしょう。このゲームプレイするエージェントに対してお賽銭の投入が推奨される理由は、そうすることによって、靖国神社という施設末永く存在し続けてもらうことができるからです。

無自覚エージェント

靖国神社に参拝する人々は、そのすべてがこのゲーム存在を知っているわけではありません。このゲームについて何も知らずに靖国神社に参拝する人々は、「無自覚エージェント」と呼ばれます無自覚エージェントも、参拝によって靖国神社意味付与するという点において、通常のエージェントとの相違はありません。「二拝二拍手一拝」という作法靖国神社に参拝する無自覚エージェント守旧派に対する援軍だと考えることができますし、「笑顔ダブルピース」という作法靖国神社に参拝する無自覚エージェント(おそらくほとんどいないでしょう)は改革派に対する援軍だと考えることができます

バックストーリー

靖国ゲームにはバックストーリーがあります。ただし、このゲームバックストーリーは、守旧派改革派とで異なっています

守旧派バックストーリーは、次のようなものです。

靖国神社は、1869年明治二年)に創建された東京招魂社起源とする神社である創建当初の祭神戊辰戦争での官軍戦没者だったが、その後も、内乱や対外戦争が起きるたびに、その戦没者はこの神社合祀された。日露戦争のころから、それらの祭神は「英霊」と呼ばれるようになった。現在、この神社には、246万柱を超す英霊が祀られている。

守旧派バックストーリーは、靖国神社に関する市販の著作物の多くに描かれているものと同一です。守旧派に属するエージェントで、自身陣営バックストーリーについてもう少し詳しく知りたいという人は、それらの著作物のうちのどれかを読むとよいでしょう。

改革派バックストーリーは、ポツダム宣言の受諾が玉音放送によって国民に伝えられた1945年昭和二十年)8月15日までは守旧派と共通ですが、その日からのちの部分は、次のようなストーリーになっています

1945年昭和二十年)8月15日の正午、「空飛ぶスパゲッティ・モンスター」と呼ばれる、平和をこよなく愛する神が靖国神社降臨した。この神は、この神社に祀られていたすべての英霊解放し、自身をこの神社の新たな祭神とした。そののちに招魂された英霊も、合祀される前に解放されているため、現在もなお、空飛ぶスパゲッティ・モンスターがこの神社の唯一の祭神であり、この神社英霊は一柱も祀られていない。

改革派に属するエージェントで、自身陣営バックストーリーについてもう少し詳しく知りたいという人は、「靖国神社改造論」という文書を読むとよいでしょう。ちなみに、靖国ゲームが開始されたのは2014年7月5日とされていますが、その理由は、この文書が公開されたのがこの日だからです。

神学的前提

最後に、靖国ゲームが成立するための神学的な前提について説明したいと思います

靖国神社という施設は、あくま物理的な建築物にすぎず、それ自体自身意味を主張しているわけではありません。しかし、この建築物に対しては、創建以来、「戦意高揚のための施設」という意味国家から与えられてきました。そして、太平洋戦争の終結後も、この施設の設置者となった宗教法人靖国神社によって、同じ意味が与えられています

しかし、靖国ゲームにおいては、靖国神社という施設に対して意味を与えるのは、国家でも設置者でもなく、この施設に参拝する人間、すなわちエージェントである、と考えます。もしもこの施設に参拝する人間が一人もいないならば、この施設は何の意味も持たない単なる建築物ということになります。そして、「二拝二拍手一拝」で参拝する人がたとえ一人でも存在するならば、この施設には「戦意高揚のための施設」という意味付与され、「笑顔ダブルピース」で参拝する人がたとえ一人でも存在するならば、この施設には「平和祈願のための施設」という意味付与されます。両者が混在している状況においては、この施設は二重の意味を持つことになります。そして、それぞれの意味の強度は、それぞれの作法で参拝するエージェントの人数の比率によって決まります靖国ゲームというのは、「靖国神社」という施設付与された二重の意味の強度をめぐるゲームだと考えることができます

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