真っ先に提示された例がファミレスを対象としたクーポンですが、そのようなクーポンはファミレス以外の飲食店から客を奪うことが明らかです。
そもそもファミレスなどのチェーン店はすでに独自でクーポンなどのシステムを構築しています。
都の政策ではむしろ、独自のシステムを構築しづらい個人経営などの小規模な事業者を支援するべきであるのに、そのような視点が欠けているように思えます。
仮に個人経営の店なども対象にしたとしても、そもそも近所に選べるほど飲食店がない地域はいくらでも存在します。飲食物の通販でカバーするような方法も考えられますが、いずれにしても地域によって活用できるクーポンの差は非常に大きくなるでしょう。
それは都の予算の使い方として、適切で公平な形でしょうか?
ビッグデータの活用についても示唆されていて、それはそれで興味深いですが、デメリットを上回るメリットが示されているとは思えません。
貧困世帯の子どもを支援する意図があると思いますが、そういう家庭の子どもはスマートフォンを自由に利用できる環境でしょうか。
国の調査によれば、スマートフォンの利用については「小学生が 43.7%、中学生が 79.9%となり、高校生になると 97.8%が利用している。」とされています。(令和5年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書)
つまり、高校生でも1万人中200人はスマートフォンを利用していません。
スマートフォンが利用できない人には紙のクーポンなどを検討するとしていますが、ではその紙クーポンの存在はどうやって対象者に伝えればいいでしょうか。
確実に伝えるためにはプル型ではなくプッシュ型にするべきで、貧困層以外も含めた全世帯に案内を郵送するような形になるでしょう。
そうなると、当初目指していた「デジタルクーポン」の形からは大きく乖離していくように思えます。
そもそも解決すべき課題は「貧困により体験が損なわれること」ではなく「貧困そのもの」であるはずで、デジタルクーポンは応急処置・対症療法レベルでしかないと思います。
提示された政策からは、より大きな課題を解決するビジョンが見えてきません。
ひまそらあかね氏はゲーム開発者としての経験からデジタルクーポンについて意欲を見せているようですが、それは彼が「できること」であっても、都知事が「やるべきこと」もしくは都知事に「求められること」からは外れていると思います。