2020-09-04

先輩にもらったマグカップ

今日みたいな終わりかけの夏を感じる晴れた日はどこかしんみりとした気持ちになってしまう。

15年以上前だが、中高一貫女子校に通っていた。

女子校あるあるなのだが、みんな「好きな先輩」がいて靴箱経由でお手紙交換したり、バレンタインには気合を入れてお菓子を渡したりしていた。

上下関係が厳しく、上級生の廊下、ましてや教室まで行くのはタブーとされており、階段廊下で同じ部活の先輩に会ったら通り過ぎるまでお辞儀をし続ける、そんな「伝統」のある女子校だった。

私はハンドボール部の日焼けした肌と切れ長一重のショートカットの先輩が好きだった。

運動神経抜群な先輩の体育の授業をひと目見ようと休み時間ギリギリまで粘って校庭を眺めたり、先輩が生徒会に入るという噂を聞けば立候補したりした。(結局ただの噂で先輩は生徒会に入らなかった)

今では先輩のプロフィールなんてほとんど覚えていないが、長めの前髪から覗く目と視線が合ったときのドキドキは今思い返しただけでも心がキュルンとする。

2年ぐらい片思いを続けた私が中3、先輩が高2のときバレンタインには張り切ってブラウニーを作り、かわいいラッピングをして先輩の移動教室ルートを把握した上で、待ち伏せして渡した。

すると1ヶ月後のホワイトデーにお返しとしてプーさんマグカップをもらったのだ。

お返しを渡されたときの袋のずっしりとした重みに驚いた。

中学生身分からすると千円以上するものを買うなんてすごい買い物だったし、先輩から形の残る、しっかりとしたプレゼントをもらった私はクラスのみんなから羨ましがられ、だいぶ誇らしい気持ちになった。

このマグカップ家宝にしようと強く心に誓い、大切にしすぎて実際に箱から出して使ったのは自分大学生になってからだった。

その後、私は高校卒業する前に転校してしまい、先輩とはそれっきりになってしまったのだが実家に帰ってプーさんマグカップを見るたびにふわふわと心がくすぐられるような気持ちに浸っている。

つかこマグカップ割れしまったら私の中のこの小さな思い出も消えてしまいそうで、考えただけで涙が出そうになる。

先輩への好きという気持ちは未だにあるけれど、思い出の中の先輩が好きだから今会ってもきっと何も話せず、もやっとした気持ちになるのがわかっているかFacebook検索したことがない。

あのボーイッシュな先輩が髪を伸ばして母親などしてたらきっとそれはもう私の知っている先輩じゃないだろうなぁと思いつつ、元気にしているのかなぁと淡い気持ちを思い出している。

先輩が悲しい気持ちになっているときがあれば、どこかで私のような人がいつもあなた幸せを願っていることが通じるといいなぁと思って晩夏の空を眺めてる。

  • あの時の先輩だけど久しぶり! と即言及が来たらどうする?

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