2019-05-13

[] #73-8「娯楽留年生」

「話は聞かせて貰いましたわ!

「じ、じょ、ジョウ? なぜここに? 話を聞いていたって、どこで、どうやって……」

フォンさんは娘の電撃来店に慌てふためく。

「え、は? 何? あんたらどういう関係?」

この場に居合わせているだけのタケモトさんやマスターは尚さら事態が飲み込めない。

独特な格好をした女性唐突な登場。

その女性と何かワケあり雰囲気ゲスト

まりにも情報が多すぎる。

「あー、えーっと、ですね……」

「お父様、ワタクシはここ最近不思議でしたの。お父様の『キュークール』に対する、病的なまでの活動。ただハマったというだけで納得するには、あまりにも異常でしたもの

センセイが順を追って説明しようとしているのに、ジョウ先輩はそれを遮って一方的に語り始めた。

自分述懐を優先させるところはフォンさんと似ていて、やっぱり親子って感じだ。

「あそこまで執着していたのは……ワタクシのためでしたのね、お父様」

そしてジョウ先輩の口から語られる真実

だが俺たちにはまるで理解できない。

どうして個人趣味が、子供のためだったという話になるんだ。

「な、なんのこっちゃ……誰か、誰か説明してくれよー!」

タケモトさんの悲痛な叫びが店内に木霊した。


…………

それから語られる、ジョウ先輩の断片的な思い出話。

それを俺なりに組み立てると、こんな感じだ。

ジョウ先輩は小さい頃、とても消極的子供だった。

自分の考えを表に出さず、行動も控えめで周りに言われたこしかやらない。

口調も普通だ。

それは親に対してもほぼ同じだった。

フォンさんは仕事で忙しく、家にほとんどいなかったため娘と会話すらマトモにできなかったんだ。

年頃の親子とは思えないほど、二人の関係には距離ができていた。

しかし、そんな状態を『キュアキュア』とかいう、当時やっていたアニメが救う。

ジョウ先輩はその映像に魅了され、時に親の忠告無視するほど熱中することもあった。

しかし、そんな困った状況をフォンさんは逆に喜んだ。

消極的だった娘に自我が芽生えたと感動したらしい。

から、その心を育むため、フォンさんは娘の趣味咎めなかった。

しろ自分自身が率先して『キュアキュア』に入れ込んだ。

娘が好きなものを好きなように愛せるよう、怖気づかせないように、その姿を見せ続けた。

親子の交流も図れて一石二鳥だ。


…………

何となくだが、ようやっと話が見えてきた。

フォンさんの『キュークール』に対する愛情表現は、その頃の“クセ”ってことか。

子供趣味を、子供のように大人が楽しむには、多少の羞恥心は気にしてられない。

一般社会における大人モラル二の次だ。

ひとまず、どっかそこらへんに置いておく必要がある。

多少やりすぎでも、娘がそれで自信を持ってくれれば、と。

だけど、フォンさんは置きっぱなしにしてしまった。

どこに置いておいたのか忘れてしまったんだ。

(#73-9へ続く)
記事への反応 -
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    • anond:20190514090026

      (おわり)だけ読んだ

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