猫の友情についてのお話しを2編させていただきたいと思います。
飼い主のいない猫の暮らしはその日を生き抜くための食料を探し、
狩りをし、縄張りに異変がないか偵察して回り、外敵から身を隠し、
時に雨風に体力を奪われる。そんな風に生きるだけで精一杯です。
一方、飼い主がいる猫ではどうかというと、雨風をしのげる家に暮らし
暑さ寒さだけでなく外敵からも守られ、きれいな水を飲み衛生的で栄養のある食事をし、
昼間は時折遊びながら主に眠り、夜間は時折眠りながら主に遊ぶ。
病気の時には、猫にとっては不本意かもしれませんが医療も受けられる。
なぜ、いきなりこんな話をしているかと申しますと、両者の間では
一方はもっぱら生命維持活動の為だけに精神が使われているのに対し、
もう一方は人間が生命を保証しているために精神活動に余裕があると申しましょうか
潜在的に備わっていた精神的な能力を発揮できる条件が満たされている。
だから、今まで常識だと思われていた猫の行動から少しばかりはみ出した
事もできるようになる。そんな風に考えたらおかしいでしょうか?
もう20年位昔の事です。
茶トラの雄猫(名前を仮にトラとしましょう・去勢済・8才)と一緒に郊外の
一軒家を借りて暮らしていました。
その頃の私はまだ猫の飼養方法について無知だった為に、トラは家と外とを
自由に行き来することをゆるされていました。トラが自由に外出できるように
ある日のこと。猫ドアをバタンと音をさせてトラが外出から帰ってきました。
そして驚くことに、続いて見知らぬ猫が猫ドアをくぐって入ってきたのです。
その見知らぬ猫がトラに続いて入ってきたタイミングから考えて、
どうもトラがその猫を招き入れたとしか考えられません。
トラの様子を見ても、よそ者が自分のテリトリーに侵入したにもかかわらず
平然としています。
見知らぬ猫はトラのドライフードを食べたそうにしていましたが、残念ながら
人間である私のことを恐れて、しばらく逡巡したのち外へ出て行ってしまいました。
このことをどう考えたらいいのでしょうか。
あるいは、トラが友達を私に紹介しようと連れてきた?
そもそも、猫と猫とが初めて友情を確認しあうときにはどのような
コミュニケーションを行なうのでしょう。不思議な出来事でした。
私が住んでいた家の隣にアパートがありました。
白黒のはちわれ(1~2才位)とミケ(生後半年位)の2頭です。
うちのトラとはあまり仲はよろしくなかったのですが、
よくうちの庭へ遊びに来ていました。
うちの庭には梅の木が植えてあったのですが、ある日猫の鳴き声がするので、
外を見てみると隣のミケが梅の木の上で鳴いていました。
どうやら、木登りをして遊んでいたのが降りられなくなってしまったようです。
そして、梅の木の根元には隣のはちわれが、私をにらみつけるように見上げて
座っていました。ミケを私から守るため逃げることなくそこにいるのです。
飼い主である隣のアパートの女性に、ミケが木から下りられなくなっていることを
知らせ、救助してもらいました。
血は全くつながっていないとのことでした。
友情というよりは、はちわれとミケは一緒に暮らしているので家族愛のような
ものでつながっているのかもしれないですね。