そうした光景を見ると、途端に夢がなくなる。
だってそうじゃないですか。
テレビゲームの世界なら、〝どう見ても勝ち目のない戦いに挑むロマン〟は人を魅了するかもしれません。
だがしかしですね、現実世界では弱き者はただひたすらに弱いのです。
ウチはこれ以上、シバきにシバかれ、心に巨大なカサブタがいくつも出来ている弱者を見たくありません。
ヒョロ短い人のブサイクな乾燥ヅラに、屈強で鬼長い人が上から下に拳を――まさに滝の流れの如く振り下ろす。
NO! それ犯罪ですよ٩(๑´3`๑)۶
「殴りてぇ。あやつを殴りてぇわぁ~」
誰でも彼でも、一度や二度はそのような怒りのエネルギーを燃やしたことが、あると思います‼
人類は総じて直情型のボケナスなのは致し方ありませんし、誠に残念で、清く回転していた地球が黒く腐るような、大残念な事実でしょう。
さようではございますが、人類は「我慢」によって文明を発達させたのです。
それをお忘れではないでしょうか?
つまりですね、暴れる高身長の人類は、文明を破壊する地球のガンに他なりません。
それにより、ウチの神経は大分高まっておりますし、脈拍は測りきれないぐらいに速度を増していて、今にも悪魔様に絶対服従してしまいそうなのです。
高校生時代、ウチの男友達であるコンボウ君が、自分よりも7センチ大きな女の子に愛の告白をすると、「小さいのが……ちょっとネ」と即座にフラれていました。
春の夕暮れ時、にんにくサプリメント常用者の朝立ちを思わせるようなピンとした姿勢で。
ちょっとだけ残る陽射しに背中を押されて帰宅する様は、まるでおいたをしたちびっ子のようでした。
ここまで書いておいて申し訳ないが、今さっきお母さんが部屋にジャマしに来たせいで、しっかり考えていた劇的なオチが全て消え去ってしまった。
お母さんは、「ゴミはないかい? 捨てて置いて上げるよ」と好意を持って接してくれたのだが、文章書きに集中していた俺は、「うるせぇボケ。二度と顔見せるな。消え失せろタコナス」と罵った。
どうして最愛のお母さんに、そこまで思慮分別のない悪質な言葉を放てるのか。
俺は何時間も自問自答した。その間ずっと、胃の中心に鉛を投げ入れられたかのような重い、重い、重い、罪悪感に包まれていた。
条件反射とはいえ、生みの親に酷い言葉をぶつけるなんて人間失格だ。
切ない気持ちのゴミ捨て場があるなら、そこに虚し過ぎる俺自身をぶち込みたい。
いっその事、死んだ方が良いのかもしれませんね。