この手の話をはじめると、決まって「継父の虐待」とか「シングルマザーの境遇では進学させられず...」とかの
キャッチーで酷い話ばかりになる。しかし実態はもう少し中庸だ。
まず、いくら劇的な離婚劇があったとしても、近年結婚した夫婦と子供の大部分は劇的に貧しくはない。
世にでる離婚サンプルは目に余るものばかりだが、国やコミュニティの自負自尊心をくすぐる例しかメディアに載らず
売文できる離婚例以外は基本表には出てこない。
で、
①慰謝料養育費のやり取りが(満額とは程遠くても)5~10年ぐらい続き
③両親の離婚過程を、ある程度余裕をもって観察することのできた子供は多く実在するが、
別に法的責任も道義的責任も果たす両親を見ているし、戸籍上断絶した祖父母や親類との繋がりが残ることだってある。
外のコミュニティを代替物にしてふんばるぐらいのリソースはある。キャリアを積み、家庭も築く。
~ここまでがギリギリ物語やメッセージとして一般人に通じるライン~
ここからがツライ。
引き続き、子供が成人するまでに両親とはそれぞれ緩やかな関係が残るわけだが、
下限がしれたものなら上限だってしれた程度のものにしかならない。
ミクロで見れば努力や精神論の入り込む余地があって、父母を反面教師にした自立への美しい物語ができあがるが、
マクロで見れば自身のルーツや幼年期の愛着を否定されて摩滅するしかない期間である。
特に両親の愛着関係を客観視したとき、そこには幼稚さを気まぐれと醜い打算ばかりが残る。
種々の責任を果たした両親を前にして取り付く島もなく、自身も成長し”こじらせた”子供として振る舞うことができない。
喜怒哀楽の大きな起伏を呼び起こすような局面は特になく、いい大人が長い期間をかけてすり減るのである。
そこには貧しさも激しい葛藤もない。
とりたてて筋が通った話にもならず冗長だから、ひたすら消耗する。