2015-05-26

好きな人幼なじみと付き合っているらしい

「付き合っている人がいるんだ」

耳を疑った。

「えっ、そうなの…。知らなかった。ごめん」

今まで行った自分アプローチがすべて空虚となり、恥ずかしさと同時に申し訳ない気分になった。

「なんで謝るの。でもうれしかった。ありがとう

やさしく微笑むと、どんなヤツなんだと想像する隙もなく、聞いてもいないのに恋人について語り始める。

幼なじみで、小学校から同級生なんだ」

失恋直後の自分には残酷過ぎた。これ以上は詳しく聞けなかった。

幼なじみ」という聖なる最強属性が、私を壊れさせた。

今週末もデートするに違いない。先週末もデートだったに違いない。それどころか今までずっと週末はデート三昧だったに違いない。毎年クリスマスを一緒に過ごしていたに違いない。お正月は二人で初詣に行ったに違いない。家族ぐるみの付き合いをしているに違いない。ご両親も認める仲に違いない。「昔はここで一緒に遊んだっけねー」なんて言って、近所の公園でもデートしているに違いない。「あの先生はどうだった」「あのクラスメイトはどうだった」なんて話題が尽きないに違いない。修学旅行は一緒の班で回ったに違いない。運動会も同じチームで協力し合ったに違いない。体育のときフォークダンスで手をつないだに違いない。バレンタインデーには机の中にチョコを仕込み合ったに違いない。席替えときクラス替えときは「一緒になれたらいいね」なんて言い合ったに違いない。同じ学校に進学するか話し合ったに違いない。受験勉強も励まし合ったに違いない。学校卒業するときは一緒に泣いたに違いない。卒業式の日、伝説の木の下で告白したに違いない。初めてのエッチは照れまくりだったに違いない。そして休みの日は猿のようにやりまくったに違いない。子どもの時から結婚しようね」なんて約束しているに違いない。好きなこと嫌いなこと、すべてを知り尽くしている仲に違いない。今まで生きてきた分の、語り尽くせない思い出がいっぱいに違いない。

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

勝てない…。

 

恋人がいる人を好きになった」「略奪愛」「彼氏持ちを落とす方法」「彼女持ちを落とす方法」なんてキーワード検索して出てきた恋愛指南記事を要約すると、こうだ。

「諦めずに良好な関係を続けよう。そして、ケンカするときを待とう。不仲を相談している隙に心を奪おう。長期戦は覚悟だ!」

アホか。そんなの待っていては、こっちが干からびてしまう。

 

そもそも、幼なじみ同士が別れることなんてあるのだろうか。あまりに強すぎる絆。越えられない壁。どうやったって今から相手の幼なじみになることはできない。

 

ふと、自分には何故こんな素敵で仲の良い幼なじみがいないのか。いらだちを覚えた。

すぐさまFacebook同級生名前検索した。

  

同級生はみな結婚していた。

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