アニメ「劣等生」はおもしろい。ネット上では丸められた情報のコピペが幅を利かし、それによって「知っている」気分を満たされてしまっているのが非常に残念でならない。アニメ「劣等生」は非常に面白いので是非見てほしい。これから「九校篇」だが、まだまだ大丈夫だ。これから見ても何ら問題がない。
さて、いまこの「劣等生」を包んでいる雰囲気というのは何なのだろうか。はっきり言えば、今雲霞のごとく湧いている「ゲームの中の異世界に移住」「強くてニューゲーム」みたいなのとは一線を画している。言い捨ててしまえばオーソドックスなSFアクションだ。アニメはアクションのメリハリが効いていて、動かない時は全く動かないのだが、動き出すと録画で見るとブロックノイズが乗るくらい動き出す。原作の異常なまでの情報はそのほとんどがすっきり切り落とされ、面白いところだけが動画にされている。面白いのは当然だ。原作小説のちょっと筆がすべっちゃった的な過剰な説明がまったくそぎおとされ、本当に心地いいところだけが残されている。友人関係であったり、偏見に対する戦いであったり、クレイジーサイコブラコンだったり。見ればわかるが、主人公司馬達也には徹底的に好意が集中する。当然物語の主題ゆえ同じくらいの悪意も太く突き刺さるのだが、それすら主人公のクレバーな切り替えしに触れ、心地よさへと昇華する。まったくもって隙がない。エンターテイメントとはこれか、と膝打つこと請け合いだ。
登場人物たちはとにかく全員が努力の人たちだ。主人公はその中でも群を抜いて努力というか、毎日己の研鑽に余念がない。常人には追いつけないほどのその熱意は必ずや見たものの心を揺さぶるだろう。作中でも言及されている通り、一流の人たちは、一流たらんと努力を続けており、それが生き方にまで身に着いた人たちなのだ。それを指して、天才ばかりという作品に対する揶揄は拗ねたように見える。
よくある批判に「天才美少女大安売り」というのがあるが、それは舞台からして当然なのだとどうして気づかないのだろう。主人公は言う。「ここに入学できただけでエリートなのだ」と。優秀な人間しかいない学校が舞台なのだし、優秀な人間は見た目も当然相応だ。どうして自分のいる現実と比べて、それを嘘くさいと批判するのだろう。そんなに自分と同じ世界が見たいのなら「ウシジマくん」を読めばいい。
そしてなにより見どころは、主人公の妹司馬深雪だ。彼女のあまりの好意に最初は面食らうだろう。しかし、追憶編、沖縄海戦を知れば違和感はなくなる。
漫画もおもしろいのだが、白眉は「優等生」だろう。アニメと原作の間くらいの濃密さで書かれている。絵柄も読みやすく、とかくセリフに重きが置かれがちなほかのコミカライズとは違う味わいを感じさせる。それにしてもコミカライズが多いな。
というところで、ぜひ、アニメ「劣等生」を見てほしい。