2011-11-26

武器がない、ということ。

前々から不思議に思っていたことがあって、それに対する自分なりの答えが出た気がするので書いてみる。

よく学校先生とか部活の先輩とかが、

「これだけは誰にも負けないぞ、というもの自分の中に作れ。それが自信になり、お前を支えてくれるだろう」

「なんでもいい、自分だけの武器を持て。それをとことん伸ばせば将来直面する困難にも打ち勝つことができるんだ」

かいう訓示をたれてくることがあった。

多分これを読んでる人たちも、ホームルームだの卒業式だので一回ぐらいはそんなこと言われたことがあるんじゃないかと思う(なかったらごめん)。

俺はというと、それはもう何度も何度も聞いてきた。

かい表現は違うけど、人生の後輩へのメッセージなんて場になると、なぜかみんな上に書いたようなこと言うんだよ。

で、一緒に聞いている同級生も同級生で、うんうん、て頷いてたりして分かったような顔をしてたりする。

あれがさ、俺物凄く不思議だったんだよ。

その「誰にも負けないぞ」っていう特技とか、「自分だけの武器」とかいもの、皆本当にあるの?誰にでも見つかるの?

俺さ、そういうの一切ないんだよ。全く思いつかないんだよ。

学校勉強はわりと真面目にやってきたほうだからぶっちゃけ平均より上だと思うが、それでも自分より頭のキレる奴なんて山ほどいるし、

運動も走りはまあまあ速いけどそこまでじゃないし、球技全般下手糞だし、筋力だって十人並みだと思う。

ルックだってこれと言った特徴のない薄い顔面、しゃべりだって特に人を笑わせるのが得意なわけでもないし、人見知りだから交友関係も広くない。

知識や経験の量もごく普通、手先は基本的に不器用お酒はどちらかというと弱い、チンコだって特にでかくない。

もう、さっぱり自分の中に飛び抜けた特徴とか特技とかが見当たらないんだよ。

そんな疑問を抱きながらもまあ大学院まで出て、なんだかんだで一応希望の職種に就くことができた。

ただ、そこでも仕事に役立つスキルとかも覚えるものの、そんなのは同業者が大体やってることだから自分だけの武器には当然ならない。

周りを見渡したら見渡したで、自分より遥かに技術や知識が豊富な人がわんさかいる。

コミュニケーション能力を生かしてあちこちから良い仕事を取ってくる同僚もいるし。かたや俺は相変わらずの人見知りで世界もあんまり広がらない。

要するに、社会人になったというのに未だに「誰にも負けないぞ」というものも見つからないし、「自分だけの武器」も持てていない。

もし先生や先輩の言うとおりだとしたら、俺はこのままじゃやってけないわけだよ。

自分の今持ってるのはこれだ、っていうのが特にいから、自分がいる立ち位置がそもそもあやふやなんだよね。

今にもがらがらと崩れ落ちそうで、そうでなくても他人に足元をすくわれそうな、そんな危ないところに立っている。そんなイメージ

とにかく自信がなくて、劣等感ばかりあって、毎日いろいろと不安で。

先生や先輩は武器があって成功できていいよな。俺はそんなのない平凡な人間なんだよ。そういう奴の気持ちなんかきっと分かんないんだろうな。

そんなふうに心のなかでくさったりもした。

でも最近、あるきっかけでふと思ったんだ。

立ち位置があやふや、自信の源になるような礎がない。

そんな状態に自分があると認識してるからこそ、俺は今の仕事必死になれてるのかなって。

何だかんだ言っても、俺はやりたかった職業に就けているわけだし、この仕事が好きで、辞めたくないと思っている。

そして今自分は決定的な武器を持っていないから、心の拠り所がない。頼れるものがない。

かと言ってぼんやりしていたらぽろっと脱落しそうだから、今の位置に留まるためにはがむしゃらになるしかない。

自分には何もないからこそ、これを続けるためには、他の奴に負けないためには、もう死に物狂いでやる必要があるんだ。

ある種、ハングリー精神に近いものがあるかもしれない。

今思うと、学生の頃からこれまでも、わりとそんな気持ちでやってきてた気がするんだ。意識してなかっただけで。

その気持ちのおかげで今こうしてちゃんと働けてるんだと、ようやく気がついた。

きっと、何か安心して頼れる独自の武器みたいなものを持っていたら、ここまで頑張れていたかどうか分からないな、とさえ思う。

ああ、俺はこういう戦い方なんだな、ってすとんと腑に落ちた。

まあ、そこに思い当たったからといって、急に今までできなかったことができるようになるわけでもないし、

仕事を続けられる自信を取り戻せたわけでもないんだが、劣等感に打ちのめされ続けた自分精神が、ちょっとは楽になれた。

自分不安定な足場にいることを嘆くより、その事実をまんま受け入れて機動力に変えていきゃいいんだ、って思えるようになった。

それからはもう、上のようにくさったりはしてない。

先生も先輩も知らなかったことを、今自分は知ってる。



俺が誰かの先生になったり、後輩にアドバイスするような機会があったりしたら、こう言おうと思っているんだ。

誰にも負けない特技や自分だけの武器を見つけたなら、それを伸ばせばいい。

でも、そういったものを持っていないからといって、落ち込んだり無理して作ろうとしたりすることはない。

そういう奴にはそういう奴なりの戦い方がちゃーんとあるんだ、って。

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