はてなキーワード: しまねっことは
○ご飯
○調子
あの√Letterの連なるシリーズとしてリリースされた、角川ゲームミステリーの第二弾。
怪作としか言いようのない奇妙な前作とは打って変わって、手堅く丁寧な出来のADVになっていた。
売れない映像監督の八雲マックスと、新人女優のリホの二人の視点を行き来しながら、それぞれの事件の謎を追いつつ、10年前に中断されたドラマ撮影に秘められた謎を解くというあらすじ。
全7話で、単発の事件に加えて縦筋を通す10年前のドラマ撮影中止をめぐるアレコレが挟まるので、プレイ時間こそ短いもののお腹が膨れる構成だ。
主人公の八雲マックスが映像作家であることに矜持を持っていることもあり、撮影していた映像から謎解きを始めたり、撮影の色々を応用したトリックを見抜くのが独自性があった。
とはいえミステリ部分は一般常識の範疇で、どちらかというと映像作家としての生き様が縦筋に絡んでいる感じで、熱血漢の良いやつなのがよく伝わってくる。
それだけに、最後の最後、オーラスで飾らない言葉であるキャラを説得するくだりは、その道の困難さを心配こそすれど、八雲マックス頑張れ!!! と応援したくなった。
もう一人の主人公リホについては、どうしても八雲の影に隠れがちなものの、駄洒落の拾い食いと評される戯けた言葉遊びを始め、可愛いシーンが多くこちらはこちらで楽しかった。
サブキャラ達も魅力的なキャラが多く、中でもワトスン役となる、曲ちゃんはとても良いキャラクタだった。
元ヤンで就職したてながら映像編集の技術はちゃんとしており技術面でのサポートは抜群、それだけでなくだらしない八雲に礼儀や作法を教えるシーンも多く、年下オカン系と類例でまとめるのが勿体ない程度には魅力的。
道中、彼女を疑う可能性がほんの一瞬だけ示唆されたところでは、助手が犯人の古典さからというよりは、心底彼女のことを信頼していただけにすぐ終わったのがよかった。
また、無口なカメラマン金手も、メタ的なネタを使うところが面白く、楽しいキャラだった。
どのキャラも職業人としてのプライドが高く、自身の職域の範疇であれば全力を尽くすシーンが多いのが読み応えがあった。
特に曲が、八雲のため…… ではなく、新人ながら映像編集のプロとして事件時の映像からある真実を見抜くところは格好良かった。
一般人主人公のミステリではマヌケにされがちな警察の人たちもちゃんと有能なシーンがあるのも良き。(マヌケなシーンはありはするんだけども)
ルートフィルムとしての続編は難しいかもしれないが、八雲と曲のコンビを主人公としたADVならいくらでも作れそうなのでシリーズ化期待したいが、残念ながら開発会社のあれこれがあったこともあるのか発売数年ながら音沙汰がないのが寂しい。
島根県の観光要素についても、前作よりは抑え目ながらそれなりにあるのも楽しいポイント。シリーズ恒例しまねっことの交流も可愛い。
ただ、最終章までは丁寧にまとまっている良い作品だなあと思いながらプレイしていたが、残念ながら縦筋の風呂敷の畳み方だけは文量が足りなかった。
他人を操作することに長けた巨悪の掘り下げが全くなく、証拠と証言を揃えて警察に逮捕させるだけなのは物足りない。
映像作品のありように関する思想バトルに関しても、八雲マックスのマックスさで押し切るばかりで、実際にそこをもっと見せて欲しかった。
とはいえ、ここまでの道中で八雲マックスのマックスな力強さを好きになっていたので、物足りないものの不自然さや違和感やなかった。