2024-01-20

別に普通」という単語自体はお前の"然るべきあり方"を規定してない

 「普通に」は「然るべきあり方」を規定するだろうか。

何が言いたいかというと、「普通に」とか「普通」という表現は、「普通である様」として「それが本来あるべき姿、様式」を決めるものなのかという話。


なんか最近

普通という言葉に苦しめられてきた」

普通普通ってそれが当たり前なのかよ、普通じゃなきゃいけないのか?」

「それを"普通"って表現するのって差別じゃないですか?」

みたいなものをよく見る気がするが、それは本当に「普通」という語によって定められる何かを基底とする固定観念なのか?と思う。恐らく"そういう"意図で「普通」と言う表現を使う人達の考え方にによって苦しめられたり差別を受けたりしたこと事実だろう、そこを否定したいのではなくその真因は「普通」という語そのものではないんじゃないの、と思う。

引用元の本題は違う話だけれど、以下のようなもののことを言っている。


そもそも、僕はいつもこの「ふつう(以下、普通)」という言葉に脅されてきた。「大学に行って就職して正社員になるのが普通だ」とか「30過ぎたら結婚して家庭を持っているのが普通だ」などという、有形無形の圧力に、僕はいつも押しつぶされそうになっている。他の立場で言えば、LGBTの人たちなどは、「普通は異性と恋愛をするものだ」「普通は男はスカートをはかないものだ」などと普通の性の体現押し付けられて、アイデンティティを抑圧され続けている。

赤木智弘."赤木智弘眼光紙背".BLOGOS

<https://blogos.com/article/70762/>


ここでもう一度、「普通」という語の意味確認する。

どこにでもあって珍しくないこと(さま)・他と比べてとくに変わらないこと(さま)・一般的であること(さま)・広く通用する状態のこと、である一般的であるというのは、"普"という字のあまねくという意味と通じており至極妥当であると思う。

 例えば、「大学に行って就職して正社員になるのが普通だ」について、文部科学省によると2019年就職して正社員になる割合は70.2%、非正規職員として就職する割合が2.7%、そして大学卒業後に大学院等へ進学する割合10.5%である。また、異性愛者の割合について、調査方法や標本のとり方に(なぜか)ブレが多く、正確と言えるデータが少ないのは事実調査意図世間の風潮を考えると実際より数値を高くだしたい)だがどれも90%を超えるし、そもそもヒトは有性生殖である

これらは普通表現しても、つまり、「大学卒業後に正社員になることや異性愛であることが、珍しくなく他と比べて特に変わりない」と考えても差し支えない割合ではないだろうか。


そして、「珍しくない」「他と比べて変わりがない」「広く通用する」ということに、「"そう"でなければいけない」「本来そうあるべきだ」という意味は含まれていないことを強調したい。つまり普通だ」が意味するところは単に、それが広く通用するほどに十分な割合であることやそれが特に他と比べて変わりがないと考えられるほどあまねく見られる要素であるということであるはずだと思う。


 「普通であることを当然のように考え、それを強要したり、「普通」でないもの排斥しようとしたり、時に差別したりすることが悪いのであって、広く一般にみられる要素や大部分の割合を占めるものを「普通だ」という形容動詞形容することが悪いわけではないと思う。

普通ではない」ことを悪いことだとする考え方が問題となっているのであって、それを「普通」を定義すること自体が悪であるすり替えるのは、また別の問題を生むように思う。


例えば

普通このパンツだったらこの革靴を合わせそうなもんだけど、そこにあえてスニーカーを合わせるのか...おしゃれだなぁ」

豚骨ラーメンと言えば普通は細麺なのにこの店は太麺なんだよ。これが美味しいんだよ!」

おにぎりといったら普通は握るのに、握らないから"おにぎらず"かぁ」

 おにぎらずは、おにぎりなのに握らないという意外性がうけた食べ物である

普通でない」ことが良い場面は確かにあって、それは日常的に多く感じているはずだし、十分に理解しているはずなのだ。「普通」を定義する或いは一般的であるさまを「普通」と表現すること自体が悪でないことは知っているはずだと思う。


 「普通」という表現を嫌う人が多いのは、多くの日本人が平均から大きく外れないこと、周囲の人と同じであること、詰まるところ「普通であること」が良いことであり、そうであるべきだと考えているからだろう。

有性生殖を行う生物普通、雄は雌を求め、雌を雄を求める」且つ「ヒトは有性生殖を行う種である」、これは生物学的な事実である。だから、「男はふつう、女が好きだ」は正しい。悪いのは「男はふつう女が好きなものなので、男が好きな男はおかしい、間違っている」である。これらを取り違えていいものなのか?


 LGBTとか一般的でないキャリアとか、属性に付随するイメージとは異なる行為とかも先に挙げた例と同じように、「普通でないけど、良い」と捉えれば良いのではないか。「普通」は統計的事実として確かに存在するんだから

そもそも、"性的マイノリティ"と呼ぶけれど、「普通」という語が単に「一般通用する、特に他と変わりがないさま」を表すのならば、

"A=マジョリティ" ⇔ "A=普通"

であり、つまり

"A≠普通"(⇔"A=普通でない") ⇔"A=マイノリティ"

 ってことになるんじゃないのか。

マイノリティってのはつまり多数派じゃないってことで、「普通」が単に多数派であることを示すなら(示すんだけれども)ば、「マイノリティ」って言葉は要は「普通じゃない」ってことじゃないのか。

 今、【マイノリティ普通でない】に違和感を抱いた人は多分、「普通」という語に定義以外の、「当然であるさま」というような意味見出しているんだろうと思う。

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