2019-12-15

島本理生に憧れた女のはなし

私は本が好きだ。

外に出るのが嫌いで、一人で家でゴロゴロする休日が何よりも好きな人間だから読書は一番の趣味といえる。

本を読んでいると、たまにこれは私のことを書いたんじゃないかって思える時がある。でもそれはきっと、私が経験した出来事が世の中にたくさんあるうちの一つだったってだけなんだろう。

そんなありふれた話をどうしても誰かに聞いて欲しくて、よくある話だなつまらんわって吐き捨てて欲しくて日記を書く。

育ってきた環境のせいなのか、私は人を好きになることが苦手だ。もっときちんと説明すると、恋愛感情を持つことが苦手。人間的に好きになっても、例えば異性として、肉体的な接触を伴いたい相手として好意を抱くことが少ない。

から20年以上生きてきて、好きになった相手は片手の数で収まるほどだし、これは私の価値観の中ではとても少ない人数といえる。

その数少ない人々には共通点があって、それは初めて会ったとき私の中で「この人のことを好きになるし、好かれる」という確信を抱くところだ。かなり主観的自意識過剰で、根拠のない共通点かもしれない。要するに私は、一目惚れから始まるタイプなんだろう。だから友達から恋人関係性が変わることはほとんどなく、周囲の環境が変わらないと(自分を取り巻く人が変わらないと)新しい恋愛出会うことが出来ないタイプともいえる。

そんな私はこの四月に会社に勤めることになった。男女比は半々くらいだけど、かなり年上の方が多い会社。そんな場所好きな人が出来るとは思わなかったし、そもそもずっと働きたいか社内恋愛はしないようにしようと思っていた。(なんとなくめんどくさくなる印象があったから)

でも、入社して最初挨拶中、コンタクトをつけてくるのを忘れてぽやぽやした視界の中で、他部署男性を目にし、きっとこの人を好きになると思ってしまった。いやいやこんなボンヤリとした視界で判断できないやろと自分を律して、仕事に慣れることに集中していた四月五月。

彼は私の同期の直属の指導員だった。

部署は違うけれど、同期に指導する声はよく聞こえてきて、しかもその声がよく通る私好みの声で。あの日ボンヤリとした視界を補うように、聴覚から好きになってしまった。

とはいえ仕事上で関わりもないし、そんなに積極的にどうにかしたい気持ちもなかったので、社内に推しができてラッキーくらいの軽い気持ちで日々仕事をしていた。

それが崩れたのが10月の話。

私が何気なしに指導員の先輩に提案した飲み会が、思った以上に大掛かりなものになり、そこに彼が参加することになったのだ。初めて彼と会話らしい会話をした私は、この人ほんとに好きだなと気持ちを深めてしまったし、きっと自分は彼のタイプだろうなと手応えを感じていた。実際に彼もそのことを認めていた。

なんとなく、話し流れと社交辞令で、ワインを飲みにいきましょうと約束をした。

きっと、社会人の方々なら安易想像できるのだろうけれど、部署が違えば仕事も違い、忙しい時期もリズムも違う。

あえて多部署の後輩を誘うこともないだろうとそんな約束お酒とともに飲み干してしまったし、期待もしていなかった。だから11月の頭、彼とたまたま帰りのエレベーターで一緒になったときに、日程決めてないなって話しかけられて動揺した。安易に好きになった。もうそもそも好きなのに。

結局その日も具体的な日時は決めなかったのだけど、彼が飲みの場での約束を守るタイプ人間だとわかっただけで嬉しかった。

そして、今月、また彼と同じエレベーターに乗る機会があった。

きっと今日飲みに誘われるなと思ってエレベーターに乗り込んだ私は、実際に最寄駅に着くころ彼とどのお店に行くか話し合っていた。

私より勤続年数が長い彼は、良いお店のストックをたくさん持っていて、ワインの美味しいお店という私の希望を叶える素敵な立ち飲み屋さんに連れて行ってくれた。

そこがめちゃめちゃ美味しくて、彼と話すのもとっても楽しくて、お互いに趣味価値観が合うことも確認できて幸せ時間だった。

そこで終わらせておけば良かったのに、どうしてだか2人して一緒に帰り、2人して一緒のベッドで寝ている。

彼には恋人がいて、私は多部署の後輩でしかなくて、友達ほどの信頼関係もないのにセフレになんてなれるはずもなく、一番中途半端関係になってしまった。

こんなのほんっとうによくある話で、私は今まで同じような状況に陥った友人たちを散々説教してきたのに、これからどうしたら良いかからない。正直超困惑してるしもうお酒飲まないと誓う。

どうしていいかからない中で、確実に分かることもあって、私は彼を嫌いにはなれないし、そんな中で私は働き続けなければいけない。

めちゃめちゃ沼やんってなる。

それも底がないタイプの沼。

人生ハードモードだなって自業自得ながら絶望するけど、私の大好きな島本理生さんの本がもっと実態感を伴って理解できるようになるかもしれないと思うと少し嬉しい。

ハマるなハマるなと言われて引きとめられていた沼に底なし沼ってどんなんなんだろうと興味本位で近付いて案の定沈んじゃう人生経験しないと島本理生一方通行しか読めない。これは私の希望的観測だけど。

島本理生に憧れた女がどうなるのか、また誰か聞いて欲しい。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん