あれには狭義と広義があると思うよ。
狭義の一発録りは、いわゆる同録ってやつだね。スタジオにオケとシンガーを集めてせーので録る。マルチトラックを使うにしてもパート毎に差し替えるためでなくマイキングやミキシングのためで、何テイクも録るもんじゃない。美空ひばりとかの大御所の時代だね。あるいはテレビの生オケ生歌唱の歌放送もそれに近いですかね。
広義の一発録りというのがたぶん THE FIRST TAKE が主張しているところ。テイクとしては初回に近いものを使うがマルチトラックレコーディングした素材のエディットを許すというもの。このエディット作業がまるでないかのような番組演出を例のバンドマンは問題視している。その一方で彼は「補正はお化粧」としてエディット自体は否定していない。
このエディット、ボーカルトラックのピッチ補正が一番派手だから問題にされやすいけれど普通にリズムやタイミングやブレスの補正も入る。たとえば声が小さそうなアイドルはがっつりコンプで叩いてダイナミクスを均一にしてあるよね? ほどよくリバーブもかかっているでしょう。多少の素材の良し悪しがあってもレーベルとしては番組として質を均一に整えるのが大人の仕事なわけで、ここにはちゃんと人手を掛けて聴きやすいものを届けないといけない。むしろあれ観てると丁寧に仕事してるなと感心するよ。
余談だけど、テレビの収録モノの歌番組も事務所に素材を送り返して修正してから放送というのもよく聞くよね? これは制作費が事務所側の持ち出しだったりするから当然なんだけど、なにもお茶の間の視聴者は審査員でもなんでもなくて、単に耳障りのいい音楽を求めてるお客さまなわけじゃん。だからこれでみんなハッピーだし現に補正の効かない生一発のライブでもみんながっかりせず違和感なく楽しめてるわけですよ。なんの問題もないよね?
THE FIRST TAKE は映像の絵力の吸引力でワンテイク無編集だと騙されちゃうのも無理はないと思う。明らかに作ってる側もそれを狙ってるんだよね。ほんとに初回のテイクだけで作ってる? と言われるとそこも演者次第なんじゃと思うけど、絵と違和感がでない程度には切り貼り少なめですよ、バックトラックも専用に誂えてあってボーカルが映える薄めのオケで悪くないやん、くらいに捉えておくと楽しめるんじゃないですかね。ゆーてあのオケもシーケンストラック敷いてありそうですけどね。ま人生短いし細かいこと気にしてたらなんも楽しめなくなりますよ。
このエディット作業がまるでないかのような番組演出を例のバンドマンは問題視している。その一方で彼は「補正はお化粧」としてエディット自体は否定していない。 それよな。そ...