■東京都98%行動抑制の根拠

毎日新聞の記事のブコメ

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/mainichi.jp/articles/20200407/k00/00m/040/269000c

で誰からも言及がなかったようなので書く．

使用されている数学モデル

98%行動抑制の根拠となる数値解析の手順は以下のページに示されている

（再現性を重視する科学的態度として，大いに評価できると個人的には思う）

https://www.fttsus.jp/covinfo/pref-simulation/

使用されているのは遅れ付確率的SIRモデルで，システムの時間発展は確率微分方程式を使って書かれている．

• 確率微分方程式は数理経済学が専門の人にはお馴染みの道具だが，普通に読める人は少ない気がする．要は，普通の感染モデル（SIRとか）では無視されている不確実性（感染の発生や回復時間などのゆらぎ）を考慮したモデルになっているということ．

• モデルの仮定自体は感染モデルとして標準的と思われる

増田の個人的見解

モデルパラメータの推定法に疑念がある

• 上記のページでは，感染報告数の実データにフィットするように (自乗誤差最小化で)，感染率や回復率といったパラメータを推定している
• 手順だけを見ると一見普通に思えるが，得られたパラメータが非常に不自然
• 特に，回復率βの推定値があまりに小さい上に，都道府県で大きくばらついている．
• 例えば東京都ではβ=0.0137と推定されているが，北海道ではβ=0.021という推定．
• 逆数1/βは「回復に要する平均時間」を表わすので，東京では回復までに平均して約73日を要し，北海道では約47日を要する．これは疫学的に妥当だろうか？
• 東京では感染率αが3月10日を境にα≒0.055からα≒0.55へと十倍になったと推定されている．専門家会議の見解とは異なるような……．

なぜパラメータとして異常な値が推定されるか (増田の推測)

• 入院患者が隔離される影響を考慮していない（入院後も市中でウィルスをばらまく設定になっている）

• 軽症患者と重症患者を区別していない (重症患者は回復までの平均時間が長いが，医療従事者以外への感染確率は極めて低い)

• 現実にそぐわないモデルを無理やり当てはめた結果，感染率の急上昇を仮定しないと辻褄があわないのではないか

98%行動抑制？

• 仮に回復率を過小評価しているとしたら，必要な行動抑制の度合いが過大評価されるのもやむなし

以上を踏まえて，個人的には医療の専門家である西浦先生の分析と比べて妥当性は高くないように感じている

Permalink | 記事への反応(2) | 10:51

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