どうしてこんなことになったのだろう。
小学生でも分かる単純明快な政策と、確かに国民を苦しめ続けるNHKの視聴料取り立てへの不満から、
新政党ながらもN国——NHKから国民を守る党——は1議席を得ることとなった。
そこまでは(有権者にとっては意外だったかもしれないが)何の変哲もない結果でしかなかった。
しかし政界に落ちたこの小さな雫の一滴は、静かに政局の水面を揺らし、やがて大きな波紋をなす。
ある小政党の合流。
次から次へとN国に関するニュースが舞い込み、ある人は面白がり、ある人は失望を表明した。
NHKをぶっ壊す。それだけを主要な政策に掲げ、他の政策は自由。
政党にしては極めて束縛の少ない集団に、その束縛に疲弊した議員が大勢集まった。
N国の代表は分け隔てなく彼らを迎え入れた。
それから幾年が過ぎた。
今やN国が第一党となり、衆議院・参議院共に2/3の議席をゆうに越える勢力となった。
今でも政策はただひとつであり、他の政策は自由。見方によっては一党独裁だ。
しかしそれは、政党の頂点に立つ者たちが他の議員の意見を事実上封殺して、
数の暴力を以って行っていたかつての政治よりも、はるかにマシな政治をしていた。
政党政治というシステムを、党として政策をほとんど持たない党が破壊したのだ。
人々も政治に興味を持つようになり、地域の議員に意見を送る市民も増え、
政党ではなく政策で議員を選び、投票率も増え、政治を堂々と話せる風潮が広がりだし、世の中も良くなった。
多くの政策を実行していたN国だったが、一つだけ実現できないものがあった。
この政策を実現してしまえば、この政党を続ける大義名分がなくなってしまう。
誰も口には出さなかった。誰もがこの政治の体制を続けて欲しかった。
でもNHKだけはぶっ壊せない。
どうしてこんなことになったのだろう。
アベを降ろす!でも同じようなことできそう……