2019-04-10

だらしない話

出張とある地の客先へ行った。

事前連絡した時、

「当日は夕方前には帰られるでしょうから、(前泊なので)前日に軽く食事でもしましょう」

と言われ、俺が行くことを口実に「一杯頂こうという腹か」と思っていた。

俺は酒がそんなに強くは無いが、お付き合い程度なら問題ない、そう考えていた。

夕方待ち合わせ場所に早々に着いたとの連絡が有り、急いで出かけていった。

夕食処はホテルから直ぐに近い所で、歩いても数分の所だった。

普通居酒屋かと思ったが、かなり人気の居酒屋とのことで、

早い時間にもかかわらず結構人は入っていた。

このお店は或る肉料理が有名との事で、早速塊肉を1人1本頼む事となった。

これがめちゃくちゃ旨い。肉にかぶりついたら放せないし、酒もがんがん進む。

肉の刺身も出されたがこれはお断りした。

いまどきどんな肉であっても、刺身危険を伴う。カンピロバクターってやつだ。

他にも焼き鳥が運ばれてきた、当然それをぱくつきながら、酒もがんがん頂いてしまう。

増田さん、もう一杯頼みます?」を何度も繰り返され、断ればよいものを、

まりの肴の美味しさにがんがん飲んでしまった、がんがん。

夜中、ビジネスホテルのベッドの上で気が付いた。

「えっ!?何で、俺はここにいるんだ?」

記憶喪失になった人が病院で目覚めたりすると、病室で会う人に対して、

恐怖のためベッドの上で身を縮めてしまうと聞いたことがある。

まさにその状態だった。

何が起きたのか分からず、感じるのは恐怖だけ。

毛布はちゃんと被っているが、着ている物は下着パンツだけ。

シャツや、ズボン椅子に引っ掛けてある。風呂に入った様子は無い。

げろを吐いた様子も無い。

必死になって思い出そうとした。

待ち合わせをした、居酒屋に入った、料理が運ばれてきた、旨かった、酒を飲んだ、何回かトイレにも行った、

会計をしようと立ち上がろうとした所で制止され、お客さんが支払いに行った、ここまでだ。

俺は必死会計しますといったが、拒絶され座ったようだ。

覚えているのは、拒絶されたところまでで、座った辺りから記憶が無い。

入り口で靴を履いたような気もするが、履いてはいたのだが、確かな記憶は無かった。

そこからどうやってホテルまで帰ってきたのだろう。

近いとはいえ方向が分からないほど飲んだのではないだろうか。

どうやって辿り着いたのか、どうやって鍵を受け取ったのか、どうやって部屋に入ったのか...

全く記憶が無い。

「やっちまったー。」恐怖が襲ってくるだけ。

明日どうやって謝ればいいんだろう?」恥ずかしさもこみ上げてくるようになった。

俺は酒は弱いほうだったから、学生時代、友人と飲んでも直ぐに酔いつぶれてげろを吐いていた。

でも、苦しんだ事や介抱してもらったことを忘れたことは一度も無い。

家まで連れ帰ってもらったことも何度かあるが、記憶に無いなんてことは一度も無い。

それがだ、げろも吐いてはいないのに、恐らく7、8杯くらいしか飲んでいないのに

ハイボール用のジョッキというのかな、あのサイズ)、

きっれーに記憶が飛んでいる。

それだけ飲めば酔っ払うのは当然なんだが、記憶が無くなるなんて理解できない。

吐くほど飲みすぎて酔っ払った訳ではないのに、記憶が無いってどーゆーこと?

翌日、「酔っ払って記憶が有りません」とは言えそうに無く、

どんな顔して挨拶に行けばよいのか分からないまま、顔を出した。

そこで、軽くジャブを打ってみた。

「すいません昨日はみっともなく酔ってしまって。」

「いやいやいーんですよ、私なんか部長に馬乗りされて殴られたことも有りますからね。」

(おいおい、それじゃ俺がかなりとんでもないことやったみてーじゃねーかよ!?

(何やったんだー、俺はよー?)

その部長にも会って、開口一番「すみませんでしたっ。みっともなく酔っ払ってしまって。」といった所で、

「何言ってんですか、酒の席のこと。なんでもないですよ。」とは言ってもらえたが、

どう受け止めればいいのか、これまた困ってしまった。

仕事のことは淡々と進み、おまけに次のお題まで頂いて、上出来だった。

帰り際、同行した若いやつにこぼしてみた。

「俺、昨日どうやって帰ったのか覚えてないんだよ。帰る直前までは覚えてんだけどね。」

「えっ!?ふふっ、覚えてないんですか!送られて帰ったんですよ!!お客さんに。」

がーーん。自分で鍵を受け取れる状態でもなかっただろうから、鍵を受け取ってもらって、

後は部屋までは自力で帰ったんだろうか。まさか服まで脱がされたわけじゃないよな?

ただただ恥ずかしさだけが込みあがってくる。

ホント恥ずかしい、月日が経てば記憶から薄れていくんだろうと思っていたけど、

数ヶ月経った今でも恥ずかしい気持ちは変わらない。

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