とても寒くて晴れた元旦だった。ぼくは正月ということもあり、叔母の家に遊びにきていた。
叔母がぼくに言った。
「僕くんおいで!今年もお年玉あげるね」
ぼくは中学生になって「敬語」なるものを教わったので大人ぶってこう言った。
「ありがとうございます!大切に使わせていただきますね」
叔母はにっこりと微笑んだ。
一方、僕の心の中では、しめしめ今年も遊戯王カードとゲームを買いまくってやろうと思っていたが。
すると、後ろで談笑していたウチの母が、
「いいのに!もう!こんなガキンチョにお金なんてあげなくて〜。どうせロクなもんな使わないんだから。」
と社交辞令を返す。
毎年正月になるとやり取りをするのだ。この会話を見るたびに正月という感じがして、僕は好きだ。
このやり取りを繰り返して、祖父、叔父、叔母からお年玉を回収していくのが毎年の流れになっていた。
(あとから知ったのだが、母親はしっかりこのお年玉の分のお返しをしていたらしい。)
ところで、この叔父叔母には、3人の娘息子がいて、1番年上の長女、2番目の長男、末っ子の次男という感じで構成されている。
僕とは3人とも、とても年が離れていて僕が中学生だった当時、末っ子の次男氏は大学生だった。
とはいえ僕は1番年が近かった末っ子の次男氏とよく一緒にゲームしてもらったり、野球のキャッチボールなんかをしてもらっていた。
「僕、今年もパチンコ行くべ!」
そう、僕の親戚一家には変な風習があった。それは、毎年正月になると祖父、叔父、僕の父親含む男連中全員で運試しといって、パチンコに行くのだ。
もちろん僕は、中学生だったのでパチンコを打てるわけなく外から眺めてるだけだった。
大抵の場合、全員が大負けして帰ってくるのだが、その年だけは違った。
僕と仲の良かった次男氏がなんと、大勝ちを決めたのだ。
次男氏はこう言った。
また、次男氏は言った。
僕「あ、いいっすよ。」
そうして、彼に着いていくこと、15分が過ぎた頃。ワクワクも過ぎ去り、正直寒くて早く帰りたくなっていた。
次男氏が口を開いた。
「着いた!」
最初僕はそれがなにか、よく認識できなかった。僕たちが来た場所は、銀行でもATMでもなく、アダルトショップだったのだ。
のれんをくぐり、中に入るととてもあったかくて、つけていたメガネが曇ってしまった。
しかもあの、ビデオ屋特有のまったりしたような甘い匂いが鼻について離れない。
しかし、そんなことはどうでも良かった。
目の前には女性の裸の写真が大量に並べてあるのである。新世界だった。ホールニューワールドである。
僕の愚息はすでにパンパンだった。
〜続く〜