同人活動を始めて10年が過ぎ、初めてサークル参加した時のことをふと1年ぶりくらいに思い出した。
同人イベントといっても、コミケのような大規模なものではなく、札幌つどーむで開催された小さなイベントだった。
生まれて初めて作った同人誌は、コンビニでいそいそと刷り上げたコピー本だった。
学生でお金も無くペンタブやイラスト制作ソフトは持っていなかったため、アナログで描き上げた拙い漫画本。
発行部数は10部、イベントで買ってくれた人は誰もいなかったが、1部だけ頒布できた。
隣の方は、私と同じ小さなジャンル内でも大手の方で、地方イベントにも関わらず多くの人がスペースに立ち寄っていた。
イベント当日まで、その方の隣だというプレッシャーでずっと腹が痛かった。
個人サイトが盛り上がっていた時代だったから、その方のサイトにも日参していたし、優しい人なのだろうとは思っていたけれど、とても年上の方だと知っていたし、学生としてはなんだか怖かった。
でも、その方は本当に優しい方だった。
おはようございます、と挨拶を交わした瞬間に、私の無駄な緊張はほどけていった。
よろしければどうぞ、とその方は新刊をくださった。表紙フルカラーのオフ本を。
なるほど、これが新刊交換の文化か、とサークル初参加の私は感慨深かったけれど、同時に、こちらが手渡せるコピー本がみすぼらしく見えて恥ずかしかった。
こんな本ですみませんが、と私はおずおずとそのコピー本をお渡しした。
その方は、ありがとうございます、と優しく笑って受け取ってくださった。
イベントも昼過ぎには閑散としており、隣の方はおもむろに私のコピー本を手に取って読み始めた。
私も、その方の御本を読んだ。素晴らしかった。手が震えたくらい、神本だった。
すぐに感想をお伝えしたいと思っても、自分コピー本のヘタレっぷりに恐れをなして、声を掛けても良いものか悩んだ。
すると、稚拙なコピー本を読み終えたその方が、明るく話しかけてくださった。
可愛らしくてほのぼのするお話でした、素敵な本を作ってくださってありがとう。その方は、そう言ってくださった。
涙が出そうだった。絵も話も線もへたくそなコピー本だけれど、一生懸命に描いたものだったから。その気持ちが報われた気がして、とても嬉しかった。
何度もお礼を言って、その方の御本の感想もお伝えした。幸せな時間だった。
私の本を買ってくれた人はいなかったけれど、1冊だけ受け取ってくれたその方の優しさに救われて、私のサークル初参加は良い思い出となった。
あれからその方は同人活動を引退され、私も活動ジャンルが数回変わった。
今はコミケや他の関東・関西のイベントにも参加し、毎回新刊を楽しみにしてくださっている読み手の方もついてくださっている。
うんち
同人女ってやついっつも長文うんこ垂れ流してんな