田舎なんてぜんぜん好きになれないと思いながら、妻の実家に住むようになって5年。家は農家をやっているので、この季節になると米の収穫にまつわるイベントが次から次へとやってくる。
とうぜん自分も労働力にカウントされてるので、この週末も籾摺りという米作りの最後の工程に徴集された。何だかんだと人手がいるので、妻の妹とその義理の父母も呼ばれてるんだけど、ほかに男手もなく、普段はプログラマーとして座ってるばかりの生活をしてるだけの自分がそこそこ主力の戦力になってる事態がおもしろい。というか過疎と若い担い手不足ってやつなんだろうな。
籾摺りというのは籾殻つきの米をナントカして玄米にする工程で、収穫して乾燥させた米が材料になる。夜じゅう乾燥機がぐわんぐわん立てる音と灯油の臭いも好きなんだけど、いまは籾摺りの話。文字どおり山のようになった米を籾摺り機? に供給し、計量機で計量された玄米を30kgずつ袋に詰めていく作業だ。
義父はさしずめプロジェクトオーナーといったところで、籾摺り機や計量器から出る米を随時チェックしつつ、大量に排出された籾殻の袋を次々取り替える。おれは最後の袋詰め係で、出来上がった米袋の口を縛っては積み並べていく。いちおうペア作業なんだけど、相手は還暦こえているので、途中から作業を少し休んでもらった。次回はもうちょい若い人連れてこないといつか破綻するのだろうと思うが、義父は作業を知ってる人じゃないと呼ぶのが面倒なのらしく、ジリ貧だなあと思う。
自分は袋に定量が溜まるまでは空き時間なので、ほかのパートを手伝ったりする余裕がある。(おそらく大きさや重みが足りない)くず米として別に出た米を運んだり、籾摺り機に米を供給したりするわけだけど、見たところこの供給部分がボトルネックになっていた。籾摺り機のキューというのかバッファというのか、原材料を受ける口になっている部分が小さくて、米を運ぶ人間のほうが、それが捌けるのを待つのにかなりの時間を使ってしまっていたのだ。籾摺り機の設定を変えれば処理速度は上げられたはずなのだけど、義父はそのボトルネックに気づかないのか、そもそもその設定を変える気がないのか(たとえば供給がだぶつくことよりも足りなくなることのほうが致命的であるとか)、設定を知らないのか、というのが分からなかったし、機械は轟音を上げているので会話のコストが高かったし、何よりもこの作業自体に当事者意識をまるで持っていなかったので、何の改善提案もする気が起きなかった。そういうのは平日職場でやるだけで十分だ。……と思っていたけど、書いてたら気が変わってきたので、来年は言ってみよう。覚えてたら。
仕事が終わって、数えてみると1トン近くの米を運んだことになっていて、これは去年も思ったことだけど、トンなんて単位にこの身が直接関わることがあるのはこんな時だけである。義父は何十本できたということは何石やな、とか言ってて、はーこれが一石か、加賀百万石とは大したもんだな、と思ったのでもあった。
手伝いたくはないが体験としては面白そう