特にこれからの話は何もしていないが、私の母には挨拶済みなので、これでお互いの親に紹介された状態にはなる。
出会いは合コンだった。終了後に向こうから連絡が来て会うことになったが、あまりにも印象が薄く、5対5の会だったにもかかわらず私は彼の顔を覚えていなかった。
駅で待ち合わせする時に顔が分からないとは口が裂けても言えないので、
「人が多すぎて見つけられないから服の色を教えて」
と言ってなんとか合流した。
*
私は病的に自分のことが嫌いだ。
嫌い過ぎて、たまに発作のように死んでしまいたい衝動に駆られる時もある。
父には物心ついた頃から容姿について色々と言われた。妹と比較してブス、ブスは髪を伸ばすな、頭が悪いから大人になってもどこにも雇ってもらえない、ニートになる前には死ね…
そうやって言われ続けて育った私には自尊心のかけらもない。
男性にどれだけ褒められても嫌味か機嫌取りの嘘にしか聞こえなかった。不愉快だった。
人より小さな胸やガタイの良い上半身、"エラ"の大きさや足の短さ、二の腕の太さ、偏差値の低さ…
自分の短所にしか目が行かず、コンプレックスの塊。周りの人間に嫌われて当たり前だと思い込む。この闇で独りもがき続けるのが辛くて、早く死んで消えたかった。
そんな私にアタックしてきた彼を、とりあえずオッケーしたものの心の中では全く受け入れられなかった。
こんな自分を好きになったのが本当なら、趣味が悪すぎる。気持ち悪い。とりあえず彼女作りたかっただけなんじゃないか。
(もし、私がここまで自分を拒否する感覚が分からないという方がいたら、どうしても好きになれないものに置き換えて考えてみてほしい。たまにトイレに入った時に見つけてしまう前の人の流し損ねた排泄物みたいな。私は自分自身がそれと同じぐらい好きになれない。)
本当に失礼なのでこういう思いを当初抱いていたとは彼には今でも言えない。
何年も受け入れられないまま過ごしたせいで、遂に私は、彼は惰性で私と一緒にいるのだとまで被害妄想を抱くようになった。
それがきっかけで私が色々と彼を傷付けるようになり、一度別れたが、数日後すぐに彼の方からよりを戻したいと言ってくれた。
「あんなことをされて、何で今でも好きなのか分からないけど、一緒にいるのは○○じゃないと嫌だと思った」
彼のこの言葉に衝撃を受けた。もしかしたら彼は本当に私の事を愛しているかもしれない。
涙が止まらなかった。
こんなに遠回りをして、あんなに彼を傷付けて、やっと他人からの愛を実感した。
そんな自分の性質に心底腹が立って、悲しかったが、ちゃんと誰かに愛されるという安心が勝った。
彼は私のことを愛している。
私も彼のことを愛している。
それが分かったのは、彼と交際を始めて2年が経った頃だった。
*
4年前、顔が覚えられなかったなんて信じられないくらい、今ならどんなに遠くから彼が歩いて来ても見つけられる。
外に出るときには必ず手を繋ぐし、部屋の中では常にくっついている。
ここまで心地良い関係になれたのは彼だけだ。
家族も含め全ての人間から嫌われている気がするし、自分も自分が大嫌いでずっと苦しかった。
そんな私を気長に愛してくれるあなた。
私はまだ自分のことが一切愛せないし許せないけれど、あなたのことは愛おしくて仕方がないです。
これからもずっと一緒にいてください。
引くわ…
ブスはよく喋るなあ
以下、童貞の僻み