姉の話をする
初めに、俺は姉と二人姉弟で、年齢差は3歳差だ。
俺たちは自営業の親のもとに生まれて、今は親父の仕事を俺が継いでいる(とはいえ親父もまだ現役である)
近所の子供は両手に収まるくらいしかいない上に同級生は1人だけ。
そんな田舎で俺達は伸び伸びと成長した、と思う。
俺と姉は割と姉弟仲が良く、遊び相手としてはちょうど良かった。
姉はなんだかんだで弟である俺に甘く、喧嘩はすれど結局は譲ってくれることが多かった。
何かと姉の言動が鼻に付いたのだ。
姉は、弟の俺が言うのもなんだが、そんなに頭がいいわけでもなく(一緒に公文式をやっていた)、俺よりも字が汚く(同じ習字教室に通っていた)、俺よりも運動ができなかった(同じ武道をやっていた)。
言ってしまえば、姉が何かで表彰されるたびに、俺がその一段階上の賞をとってしまったり、身体能力を上回ったりした。
だから多分、当時の俺は見下していたのかもしれない。
姉の優しさに甘えて、姉の言動に一々噛み付いていた。
話しかけてくる姉に、苛立ち、ドジをする姉に虫唾が走り、それでも朗らかに笑う姉にどうしようもなく腹が立った。
その頃の俺は中学生くらいで、生徒会をやったり、部活をやったりと忙しく駆け回っていた。
一方の姉はといえば、第一志望の高校に落ちて、県立の進学校へと通い、中学時代は学年10位以内をキープしていたのとは反対に、学年のワースト10から数えたほうが早いという堕落しきった学校生活だったのだ。
だからそんな姉に、たぶん矛先が向いたのだろう。
そんな姉への反抗期は、俺が姉の落ちた高校に受かり、姉は短大へ進学したあたりで収まった。
気付けば、俺は高校をサボりがちになり、姉は短大とバイトと自分で立ち上げたサークル活動と忙しく駆け回る。
まるで正反対だと思った。
姉は、本を読むのが幼い頃から好きで、小中高と多読者ランキングに名を連ねており、姉が進んだ短大も、司書育成の短大だった。
そんな姉は今、東京にいる。
嫁さんをもらって、親父の仕事を継いで、地元に腰を据える俺と正反対に、独身の姉は東京で派遣社員をしながら飲食店のバイトをしている。
もうすぐイケメンの彼氏を土産に、帰るよ!