2018-01-26

イトーヨーカドーおでん


寒いのでおでんを買った。


早速レンチンしようと、フタに貼付されたシールに印字されている説明を見る。『フタを少しあけて電子レンジ(500W)で3分00秒』と書いてある。

さらに下には『電子レンジ使用時は、玉子の破裂に注意して加熱してください。(温め方は裏面を参照)』と書いてある。

フタの裏を見ると、そこには何も書いていない。透明なフタ越しにシール粘着面がこちらを向き、消費期限などの文字が裏映りに透けていた。


これはおかしい。


書かれるべきものが書かれていない。


もしやと思い容器の底を見たら、シールが貼ってあった。具が容器から零れないように天地を保ったまま見なければならないため、おでんの容器を天にかざすような構えであった。

そのシールは確かに日本語なのは間違いないが、どうも文字の並び方が異様だ。ぱっと見ると、『保消黄破び材シソ)……』という文字時計周りに90度傾いた格好で記されており、直ちに意味がわからなかった。そこで、容器を反時計回りに90度―――具が容器から零れないように水辺面で90度、だ―――傾けることで、正確に『だしの旨み!煮込みおでん』という商品名から始まる注意書きについてをとっとと読むことにした。おでんの容器を天にかざすように構え、そのまま双腕前後する。私から見て、左手が奥に来るように運動すれば、期待される注意書きが読める。皆さんも同じ境遇に遭われた場合は、私と同じ手順を踏むことで、しっかりとその文意理解できるはずだ。誤って右手が奥に来るようにさせてしまっては、文字の天地が入れ替わってしまい、文章を読みにくくさせてしまうので、注意してほしい。


電子レンジ使用時は玉子が破裂する恐れがありますので玉子に切れ込みを入れ(黄身に届く程度)、上蓋を少しあけ加熱して下さい。』

なるほど。直後に、


消費期限 別途表ラベル記載


そういえば、消費期限確認せずに買ってしまった。食べる前に確認しなくては、期限切れのおでんを口にしてしまうかもしれない。最近コンビニ消費期限の過ぎた中食レジで通らないようになっているようだが、スーパーもそのようになっているとは限らない。同じ企業でも導入に差があるのはよくあることである。見切り作業でうっかり見落としてしまうということも、やはり人が仕事に携わる以上起こりうることだ。確認しなければならない。


そこで私は、持ち上げていた容器を今までと手順を逆に踏んで容器の上面を見た。いかにも「レンジでチンして温めて下さい」と言わんばかりの、ゲル化されたスープおでんの具が、寒々しい佇まいでそこにあった。


ベルがない。


私は気が狂いそうになった。表ラベルを見るためにこのおでんの具を皿に移さねばならないのか。いや、待て。まずは、玉子に切れ込みを入れ心を落ち着かせるんだ。そう思い私はレジでいただいた割り箸を使い、持つ手の方で玉子を割った。口に運ぶ方を使っては、万一のこともある。

平静を取り戻しつつある私に理性が再び宿ったのは幸いした。なあんだ、そういえばフタ(上蓋)の外面の側に、しっかりと印字されていたではないか。『18. 1.29午前1時 A』私はこれが平成29年1月18日である可能性を考慮しながらも、これが2018年1月29日のものである常識的判断を下した。


なお、ここで甲殻類アレルギーをお持ちの方は原材料が先程の注意書きに書かれれているため、そちらを確認する必要がある。アレルギー体質の方でうっかりここまで失念していた方は、先程の所作に従い改めて文章を読まれたい。

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