「お、こんな所で会うなんて奇遇だな」
悪魔らしき仮装をしているが、もっと具体的なモデルがいた気がする。
「ああ、この仮装? イービルマンのコスプレ。実写映画版のデザインだ」
ああ、そうだ、イービルマン。
だがイービルマンの実写版って、確か十数年以上前の作品だったような。
なんでそんな微妙なのをチョイスするんだ。
「お前の趣味にケチつける気はないが、『ヒューマン・アウト・ザ・シェル』とか、かろうじて『退却の小人』あたりじゃないと伝わりにくいんじゃないか?」
「やだよ、そんな如何にもパリピの御用達みたいなの。『ヒューマン・アウト・ザ・シェル』をネタにする位なら、『ブレードインナー1192』の方をネタにするね。目玉つぶされる人の仮装ね」
「流行が嫌なら、もう少し不朽の名作とかにしたらどうだ。ティム・バーサン作のゴシック映画とかさ」
「ティム・バーサン? 冗談はよしてくれ。才能の出がらしで見せ掛けだけの映画しか作れなくなったロートル監督だろ。時代遅れなのにパリピの御用達という最低のチョイスだ」
だが、今はそんなことはどうでもいい。
こいつとシネマ談議をしたいわけじゃないんだ。
「まあ、それはともかく、弟を見なかったか? こっちに来たと思うんだが」
「弟くん? さっき見かけたよ。『お前たちのやってるのはハロウィンじゃない!』とか叫んでた」
自分の表情が歪む。
俺はそれを左手で覆い隠す。
あいつ、予想していた通りのことをやっていた。
自分がヘマをしたときよりも、身内のことのほうがかえってキツいかもしれない。
「弟くんのあの様子からして、恐らくハロウィンの出生とかを聞きかじったんだろうな。ああゆうニワカ仕込みの知識で行動できるのは子供か、子供みたいな大人の特権だ」
「どっちに行った?」
「商店街の方に向かったよ。それにしても、弟くんの青臭さが羨ましいよ。原理主義者や懐古主義者なんて、文化の新陳代謝を阻害しコンテンツを廃れさせて、足を引っ張る存在だってのに。映画と一緒だ」
お前も大概、懐古主義だろ。
なに? なに?
これがハロウィン?
これが? カボチャ?
それが何なの?
なにこれ?
なに? なに?
何かの間違い?
なに? なにが楽しい?
なぜ?
なぜ?
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==== 「この街にようこそ」 歌:マスダと愉快な仲間たち 作詞・作曲:ポリティカル・フィクションズ 覗いてみないか 不毛すぎる世界を 案内するよ 僕らのダイアリー これがダ...
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