この手の英雄にありがちな像も当然のように作られていて、待ち合わせ場所としても定番となっている。
ただ、その知名度に反してリダイアという人物が何者か知っている人は少ない。
もちろん、俺もとある機会が訪れるまで知らなかった。
……いや、やっぱり現在進行形で知らないと言ったほうがいいかもしれない。
俺の通う学校では、授業と同じくらい課題について重視している。
今回は歴史だった。
数人でグループを組み、何らかのテーマについて取り組む方式だ。
俺のグループはというと、タイナイ、カジマ、ウサク、よく連れ立つメンバーたちである。
惰性で組んだというのもあるが、円滑にコミュニケーションを取れる相手のほうが、課題達成の作業効率が増すという理由も勿論ある。
俺たちは数分話し合い、リダイアについての経歴をまとめることになった。
この町を代表する有名な英雄だし、簡単だという目論見があったからだ。
だが、この考えは甘かった。
「まとめる」ってのは、ただ情報を抜き出して、それをくっつけるだけでは不十分だ。
いや、正確に言うなら、いくつかの文献を照らし合わせる度に整合性が取れない箇所がどんどん出てくるのが問題だった。
たとえば彼の活躍の記録を時系列順に並べると、離れた場所で同時に活躍していることになってしまったり、明らかに平均寿命より遥かに生きていることになってしまう。
他には多芸な万能超人だったり、その時代にいる著名人が大体友達になってしまうこともあった。
虚実入り混じっていることは明らかであったが、どれが虚構で事実か調べれば調べるほど区別ができなくなっていく。
「……気づくのが遅すぎたね。期限は待ってくれない」
今から別のテーマを選び、先生に判定が貰えるような成果物を作るのは様々な面で難しい状態だった。
「嘆いても仕方がない。確かに我らは困難な道を選んだ。しかし、それでも進むしかないのだ」
勿論、それはどちらかというと消極的な判断からくるものではあったのだが。
≪ 前 どうしても後一歩というところで完成に届かない。 やはり問題はリダイアに関する情報の真偽、その取捨選択ではあるが、グループ内で意見が分かれるのも混迷の一因だ。 「や...
≪ 前 期限当日。 俺たちの成果を、他のグループの前で発表する日ということだ。 他のグループの発表はというと、自分たちの住む町の歴史だとか……まあ何も言うことはない。 み...
≪ 前 俺たちからすれば無理やり辻褄合わせをしただけの内容だったのだが、これが意外にも教師からは高評価だった。 ヤケクソ気味な発表スタイルが真に迫っているように見えたのだ...