テレビドラマや青春映画に出てるような若手俳優でなく、いわゆる2.5次元舞台などでラケットを振って踊ったりするような若手俳優だ。
数いる若手俳優の中でも自分より2つ年下のAくんが大好きだった。
Aくんの舞台やイベントには、東京公演はもちろんのこと地方公演もほぼ全て通うほど、何よりも優先させてきた。
推しはだれ?って聞かれたら、もちろんAくんって答えていた。
もちろんわたしも行った。
イベント終了後、いつも通り連番していたオタク友達とそのままオフ会を行なった。
友達と別れ、1人で駅に向かっている最中に目の前にある人を見つけた。
「お疲れ様です、Bさんですよね?今日のイベント参加してました。とっても楽しかったです」
ありがとう、と足を止めて話を聞いてくれたBさんだったがかなり顔が赤くなっていて酔っ払っていた。
あとから聞くと、イベント終了後出演者たちは打ち上げを行い、その場でかなり呑んでいたとのこと。
酔っ払ってない、まだ全然呑み足りないくらい、このまま呑みいっちゃう?と誘われた。
一瞬でわたしの酔いが覚めた。
このままBさんと呑みにいき、うまく行けばAくんと繋がれるかもしれない、と脳内で計算式が駆けめぐった。
「わたしもまだ呑み足りなくて」
じゃあ行こう、と歩き出したBさんの後をついて行き居酒屋のようなカラオケのような個室に入った。
別にエロいこともせず、今日のイベントのことなどで盛り上がった。
そこでBさんがわたしに、絶対俺のファンじゃないよね?Aくんのファンでしょ?っと投げかけてきた。
「Aくん目当てで今日のイベント参加したんですけど、Bさんがほんと面白くて一瞬でファンになっちゃいました」
それを聞いたBさん気を良くし、じゃあAくんをこの場に呼ぼう!と言い出した。
電話をかけるBさん。
電話が切れた。
数十分後、扉が開いてやってきたのはもちろんAくんだった。
わたしを一目見て固まった。
Bさんは、わたしがAくんのファンだって伝え、Aくんも知ってますよと答えてくれた。
それだけですごい嬉しかった。
帰り際、酔っ払ってるBさんを先にタクシーに乗せ、路上でAくんと2人きりになった。
ごめんね、とAくんが謝ってきた。
迷惑かけちゃったね、先輩に呼ばれたから行かなきゃと思ってきたけどまさか○○ちゃんだと思わなかった、と。
終電もなくなり、タクシーで帰るには遠いわたしが困っているとAくんはうち来る?と言ってきた。
断れるはずもなく、そのままAくんの家で朝を迎えた。
どんな顔して行けば良いのかわからない。
でもAくんのプライベートで会えるようになった。
彼女になれないもどかしさがあったがセフレで充分だと思っていた。
でもAくんの舞台を見ることが生きがいだったわたしが、自分の愚かさで生きがいを殺していた。
AくんともBさんとも関係を切った今は、別ジャンルの芸能人のファンとして生きている。
新しい生きがいを見つけ、毎日が楽しくなった。
Aくんの活躍も別ジャンルながら、毎日のように聞く。わたしがファンだった時も人気だったが、さらに有名になっているらしい。
純粋なファンとしてまたいつかAくんの舞台を見に行ける日が来ることをまっている。
ヤマもオチもないお焚き上げの話。