うちで飼ってた猫が亡くなった。
夜七時過ぎくらいにうちに帰ると、ドアを開けるなり娘が
「みーちゃんが息をしていない!」と大声で泣き叫んだ。
慌ててその場へ向かうと、押入れの手前下のちょうどそこだけフローリングになってる和室で静かに横たわってた。
体に触れるとまだ温かかったが、確かに息をしていなかった。
触れるとどんな時でも猫らしくぐるぐると嬉しがるのにまったく微動だにしない。
ふと見ると失禁というか、床には尿が大量に流れていた。
ともかくこのまま置いておけないと判断して、マンションのゴミ庫にあるダンボールを取りに行こうと玄関を出ようとするとちょうど買い物に行っていた妻が帰ってきたところだった。
「みーちゃんが亡くなったようだ」
と告げると妻は一瞬で表情を変えた。
ダンボールを取ってふたたび戻ると妻は動物病院に電話していた。
おそらく心停止して10分以上は既に経ってるから動物病院でも無理だろうと思いつつ、ダンボールにタオルを敷いてそこに入れた。
ふと、もう一人いるはずの息子のことが気になり、和室に引きっぱなしになってた布団をめくるとそこでゲームする息子がいた。
動物病院では、先生が酸素吸入しつつ心臓マッサージをしてくれたが、息を吹き返すことはなかった。
状況から、最初は押入れの段の上にいたが、そこから降りようとして失敗して落ちてしまい、頭を打ってしまって打ち所が悪く死んでしまったのではないか、とか先生と話したけど、遺体解剖するわけでもなく原因は分からない。
昨日まで、というか家にいた妻や子供の話では夕方まで、老いたとは言えそれなりにいつもと変わらない様子だったらしいし、腎臓は高齢とともに少し弱っていたが大した病気もしたこともなく、食事だって普通にとってたし排尿排便もまるで問題なしで、体重だって至って普通、予兆は全くなかった。年に一回の三種混合ワクチンも欠かしたことなく、その際にいつも軽く診断もしてもらってたし…。何れにせよ、原因は分からない。
うちにその亡骸を抱えて帰ると娘は依然として泣いていたが、息子がその死を理解できず、亡骸をみるもののすぐにゲームしようとしたので流石に妻が怒った。
でも、ほんとに理解できなかったようで、いずれ目を覚ますとでも思っていたらしかった。不意に息子が「これからどうなるの?」と聞いてきて「明日役所に引き取ってもらって焼かれることになる」と答えた時点で理解したらしく、突然大泣きしだした。
今年で17歳になる筈だった。
妻と結婚する年に、一人暮らししていた俺のマンションに妻が予告もなく生まれて間もない子猫を友達から貰い受けて連れてきた。
だから付き合いとしては多分、家族の中では一番長く付き合ったのが俺だろう。
彼女(※雌である)は子猫時代、恐ろしく元気でやんちゃだった。
俺は引っかき傷が耐えなかった。
あまりにとんでもなくやんちゃだったので俺も彼女をビシバシ叩いた。
そんなもんでやんちゃが止まることはなかったけど、カーテンを上るのだけは止めてくれたのが懐かしい。
思い出は語り尽くせないけど、なんとなく最近、死期は近いだろうなとは思っていた。人間にすれば90歳位だし。
亡くなって、実のところ、自分自身は特に悲しいとか感情は湧いてこないのが不思議。これからじわじわくるのかな。
16年と11ヶ月。ありがとう。俺がそっち行くまでまだ大分あるけど覚えててくれるかな。覚えててくれたらお前が一番気持ちよかったらしい尻尾の付け根をいっぱい叩いてやるからな(笑)