最近iOS、Android向けの「神界のヴァルキリー」というゲームをやっている。いわゆる「ソーシャルゲーム」に属するもので、数百枚に上るカードを武器に一本道のシナリオをこなすというタイプのゲームだ。これが最近バージョンアップしたのだが、その中で、今まで無制限に上昇可能だった能力値を19999に制限するという措置がとられることになったのだが、ところが、この際に既に制限値を超えたプレイヤーに付いては値を引き下げないと発表した。まだ始まってそれほどでもないゲームだが、このために、スタートダッシュでアイテムを購入して能力値を上げた一部のプレイヤーが事実上最強の状態にとどまることになり、単に強いだけならともかく、ランダムマッチのPvPや魔女を倒す協力プレイがあることなどから、プレイヤーの間で反発を買うことになった。通常こうしたゲームでは、最初にある程度制限を行い、徐々にそれを解放していくのだが、サービス運営側はなぜか最初に制限を設けておらず、その点は十分問題がある。ただ、これは、そもそも運営の問題ではなくて、ゲームの仕様の問題ではないかと思うのだ。
先日App Annieというサイトが発表した数字で、日本のガンホーによるパズルズ&ドラゴンズが売り上げ一位になったと話題になった( http://blog.appannie.com/app-annie-index-social-networking/ )。ここで二位になり、その前までは一位だった"Clash of clans"は、日本で流行っている(とされる)カード収集型ソーシャルゲームとは全く違う。プレイヤーは防衛用に街を作り、兵士を生産し、その兵士でゴブリン村攻略のシナリオを進めたり、ランダムマッチのPvPを行う。いわゆるFree2Playなので、参加は無料だが、ゲーム内通貨であるGemを有償で購入することでゲームを優位に進めることが出来る。ただ、ゲームに出てくるキャラクターはバーバリアンだとかアーチャーだとかごく普通のものが10種類ほどあるだけ、街作りも壁や砲台を立てる地味なものだ。ゲーム開始当初の難易度は高くなく、設備や兵士の生産は短い時間で出来る。レベルが上がれば利用できる設備も増え、その代わり時間もかかるようになる。基本的に無料でも進められるが、Gemを利用するとこれらの生産が短時間に行えるようになるという仕組みだ。逆に言えば、Gemにはそれしか機能がない。レベルが上がると街作りに必要な条件が厳しくなるのでGemが必要だが、それ以外は特に利用することもない。ランダムマッチもレベルに合わせて行われるし、選択権もあるので、突然強いプレイヤーを倒さなければいけないこともないし、そこからの修復も簡単に出来る。要するに、金をかけた所で、他のプレイヤーを圧倒することはほとんどないのだ。
その一方、「神界のヴァルキリー」や、それに近いゲーム(この前に「海賊ファンタジア」という、同じくカードの強さがものを言うゲームもやっていた)は、金をかけた分が、そのまま強さに反映する。通常入手できるカードはほとんど能力が無いに等しく、R(レア)とかSR、HSRと呼ばれるカードを入手するかしないかが、プレイヤーのゲーム進行を左右することになる。「神界のヴァルキリー」に至っては、強化用のアイテムも有償で購入することも出来る。強力なアイテムの入手はプレイヤーのレベルと関係なく機能するため、ゲーム開始時点からいきなり最強になることも可能だ。
こういう仕様は一見筋が通っているように見えるが、課金システムとゲームが強く絡んでいるため、一歩舵取りを間違えるととても面倒なことになる。レベルの解放やカードの入手率の変更が、そのままダイレクトにプレイヤーに影響を与え、どういう変更を施そうが、大抵の場合に有利/不利がどこかで発生してしまう。発生するだけならまだしも、有償サービスの利用者まで巻き込んでしまうため、センシティブな不満が出やすくなる。つまり、ゲームの仕様変更で不満が出るのは、単に「運営が悪い」という話だけではなくて、ゲームの根本的な所に欠陥があると思わざるを得ないのだ。
正直言って、こういうゲームばかり開発されている現状は、少し心許ない。パズドラをやれば認識は変わるのかもしれないけど、それでも、しばらくこの波は止まりそうも無いし、こうした欠陥に気づかない限り、残念ながら疲れるような騒動はしばらく続くのだろう。