日本のネット社会に古き良き時代を取り戻すべく、立ち上がった闇の組織。
彼らは、インターネット上に、23時から8時までしか接続できない、全く新しいネットワークを構築した。
そのネットワークに接続するためには、PCやネットワークに対して、今のインターネットにするよりも、基礎的に高い知識とスキルを必要とした。
自動的に接続をしてくれるソフトなどは存在せず、全てを自分の勘と経験と知識に基づいてログインする必要があったが、その能力さえあれば誰でも接続はできた。
必然的に最近ネットを始めたようなライトユーザーはそのネットワークに接続することを許されず、ネットワーク上に集うのは、昔からの、何でも自己構築が原則のヘビーユーザーばかりだった。
そのネットワーク上に集まったヘビーユーザーたちは、その世界に驚喜した。
そこにはテキストサイトがあった。どうでもいい個人のホームページがあって、日記があって、掲示板があって、リンクの冒険(爆)があった。
ちょっと裏通りに行けばあゆ板があった。一生使う必要もなさそうなアプリにみんなが食いついて「いただきます。うp感謝です」と心にもない言葉を残していた。
5分ほどの動画や音楽を手に入れるためには1時間や2時間の転送速度を軽く要した。不自由の中で、彼らは取捨選択に迫られながらも顔は苦痛ではなく、楽しみに溢れていた。
匿名掲示板は殺伐としながらもマターリとしていた。政治家はどこの党のどんな派閥の奴であろうと、ネタでしか無かった。
ナンセンスや反社会的なジョークやイタズラが、非難されずに賞賛されていた(面白ければ)。
ただの盗撮で社会的地位を失ったタレントは、みんなにさらに叩き潰されるどころか、逆に神と崇められアメリカの雑誌の表紙にまで推薦されていた。
糞つまらない正義や正論を叫ぶ奴はただ黙殺されるのみだった。シラネーヨみたいなAAが1つ返ってくるのが関の山だった。
誰かと繋がりたい時はICQを使った。数百数千のフォロワーとではなく、数名の友人と来る日も来る日も夜通し、同じような話題で盛り上がっていた。
その様子を伝え聞き、ライトユーザーたちは逆に驚愕した。不自由と不便と無秩序しかないように感じられた。何が楽しいのかひとつも理解できなかった。
しかし、日ごとにヘビーユーザーたちは噂を聞きつけてはその世界へ旅立ち、ついにインターネット上にヘビーユーザーはどこにも存在しなくなった。
今、インターネットの未来を取り戻すため、若いユーザーたちが立ち上がる。