2021-07-21

誰も得しないからやめた方がいいやつ

ルックバック』が公開されて、現役の漫画家たちが大絶賛。

漫画家たちの中には「才能の違いを見せつけられた」「やってられない」など言って、

ファンに慰めてもらっているような光景もそこそこあり。

これついて、そんなこと言わなければいいのに、と思う。

昔、『シン・ゴジラ』が流行ったときに、庵野秀明監督同大学同期で因縁を持つ島本和彦先生

「やめろ庵野、俺より面白いものを作らないでくれー!」と感想を表明し、バズっていた。

島本先生漫画アオイホノオ』では、

うぬぼれ屋の主人公ホノオ君がすごいものを作っていく庵野君にボコボコにされ続けては悶えるというお馴染みの展開があり、

それを現実リアルタイムでやるというネタであり、好敵手?への最大級の賛辞だ。

島本先生漫画を読んでいないSNSの観客にもこのリアクション面白がられ、

すごい庵野監督小者っぽい島本先生 という構図が笑いの種となった。

島本先生リアクション自体についてはハハハやってるやってると思いつつも「そういう認知」が「事実」として広まっていくと、

私はなんだか笑えなくなっていった。

というのも、私については単純に『シン・ゴジラ』よりも『アオイホノオ』の方が好きで、

作品レベル的なものも上に見えていて、才能的なものも上に見えていたからだ。

もちろん系統からし全然別の作品だが、とはいえ

シン・ゴジラの観賞料が1万円だったらきついな

でもアオイホノオは全巻そろえて1万円払っても満足感しかないな

あとシンゴジラを二周目三周目する気は私はないけど

何度でもつい読み返してしまうのはアオイホノオだな…

ということで、自分の中では「アオイホノオの方がすごい」という結論があった。

ところがその『アオイホノオ』の作者である島本先生自身

庵野天才」「俺より面白いものを作るな」的な発言をされていて、

島本和彦は、庵野秀明より面白いものが作れない」という認定SNSにおりていくのは…

やめてほしかったなー。

作者自ら『アオイホノオシンゴジラより面白くないんです』と取れる発言をされると

一読者は何も言えない。

読者は全然そうじゃないと思っていても、あ、作者はそう思ってるんだ、なんか悲しいな、と思う。

もし作者が、創作家ならではの観点で本当にそのように見えていたとしても

ここに新刊を発売日に買い続けていた人がいる以上

「やるな庵野。俺のアオイホノオに並ぶレベルまできたか…」

ぐらいのネタで賛辞を贈ってほしかった。

とりあえず創作家でない一消費者自分としては、

審美眼が劣っているのかもしれないけど、

シンゴジよりアオイの方が面白いし才能?というのも感じる。

まあそんなわけで、追い続けているファンがいる以上

あんな才能見せられたら鬱になる』みたいなこと、

もし本当に思ってても、プロは言わない方がいいと思う。

ファンファンでない人には全然劣ってるように見えてないかもしれないし、

あなたこそ真の才人、創作者として生活に潤いを与えてくれるヒーローと本当に思っているファンは、

なんかすごく水を差された気持ちになるだけだから

同人絵描きさんに「本当に素敵です!」って言ったら「自分なんかゴミしか描けなくて生きてる意味がない」って返されたあの時に近い。

アマチュア界ですら「そういうのは誰も得しないからやめよう」って常識化されてきたように思うのに、

今この時代プロたちがしているのを見てなんだかなぁと思った。

もう一つ。

自分の失敗談の側面からも。

自分もある分野における専門職で、そこそこ重宝してもらっている。

一つプロジェクトが終わったときのお疲れさん会で別会社作品の話になり、

私はそっちにいる同業の人の腕前を尊敬していたので

「あの人は天才ですよ」と褒め称えた。

べつに、自分を下げて褒めたわけではなく、単純に「あの人は本当にすごい。天才尊敬する」と言っただけ。

すると何が起きたかというと

「え?そうなの?」「増田さんって、超すごいと思ってたけど中堅ぐらいだったの?」みたいな空気になった。

そのプロジェクトでは私の分野は私一人で回していたので、

内容レベルに対して詳しい人がいなかった。

みんな私の納品物を「すごい」「これなら勝負できる」と思ってついてきてくれていた。

からもしかして自分たちが作ったものは、あまりすごくないものだったのかな」みたいな疑念を抱かせてしまった。

実際は「向こうもすごいが自分絶対に負けていない」と思っていただけに、誰も得しない発言をしてしまった。

さらに、そこに同席していた特に親しいわけではないマネージャーがその後、私が「天才」と褒めた方を雇ったと聞いた。

「すごい仕事をしてくれた増田さんが天才と褒めるのだからすごいに違いない。増田さんと同額程度だし」だったそうだ。

まり本来のものとなる確率が十分にあった仕事を1つ奪われてしまったわけだけど、

まあ私の言葉を素直に受け取ったらそうなるよな…と納得してしまった。

(単純に、私の仕事評価が低かった節も当然ある。その場合は私の発言が乗り換えの決め手になったのだろう)

漫画家世界に置き換えるなら、

1つ空いた雑誌の新連載枠に対して

「Aさんは天才です」と言った待機中の漫画家Bではなく、Aさんが引っ張ってこられた。

払うお金が同じぐらいなら、お試しや人脈拡大の気持ちも手伝ってそうなるのは自然なこと。

というわけで、ファンがついてる専門職なら同業者に対して「あの人は天才」は絶対言わない方がいいよ、

ファンのためにも自分のためにも、みたいな話でした。

  • なるほど。   自分は、創作をするものとして、例えば「これは天才だわ~!」という感情が胸の中に去来したならばそのリアルを表現せずにはいられない。もっといえば、己の感情のリ...

  • お前はもっと自分に自身を持てよ。自殺した前田仁みたいに他人に評価を委ねるな

  • 業界を盛り上げようと良かれと思ってのおべんちゃらでもネットメディアのイナゴ記事に食い尽くされるだけで業界のためになるとは言えないのよな

  • あげたあとは下げて普通につきあってりゃいいのに それツイッターでやると信者から内部抗争みたいにみられて ものすごーーーーくめんどくさいことになるからしょうがないよ

  • 永年来のサザンファンの義兄 『…今度のアルバム、ボクはどうもイマイチで買うの迷ってんだけど、どう思う?』 音楽なんでもツマミ喰い派の義弟ワイ 『ファンっていうなら買いまし...

  • ?よくわからんが、作品に対する評価や感想は千差万別だし、あなたが抱いた感想はあなただけのものだろう?作者であろうと関係ない あなたがAよりBが面白いと思ってるならそれが真...

  • 島本和彦センセも芸風の解らんこんな不肖のファンもって可哀想だな(笑)

  • 勇者は絶対勝てる魔王に戦いに挑むのにいつも危機感を感じさせながら旅してるのは面白くするためだよ そういうもんじゃない?

  • ファンを自称するくせに島本の凄さを全然解ってないんだな

  • 島本の話はただの過去事例なのに島本批判の記事だと思われてんのかわいそう ルックバックへの卑屈マウント批判のお気持ちだろ

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