2021-06-30

ナチスは良いこともした」の間違い

この田野大輔って先生大丈夫なの?

https://anond.hatelabo.jp/20210628075114

なんか説得されている人がたくさんいるので、以下に間違いを指摘しておきたい。


「「絶対悪」というのは宗教とかイデオロギー概念であって「ナチスが1個でも良いことをしたかどうか」のような事実を争う話への反論たり得ない。」

→「良いこと」も価値判断であって事実ではない。「ナチス」と「良いこと」をつないだ瞬間に、ナチス体制全体を部分的にでも肯定したことになる。百歩譲って増田個人意図はなくても、意味としてはそうなる。以下にくどいほど繰り返すけど、増田基本的な間違いはここにある。

「ある政権戦争ホロコースト引き起こしたことはその政権の全ての施策が間違っていたとする根拠になるだろうか?」

→おそらく田野先生もそんなことは言っていない(と思う)。それをナチス人種差別的な政策理念と切り離して「良いこともした」という言葉にまとめてはいけないというだけ。

「「絶対悪」だの「悪の権化」だのという変な匂い言葉をやたらに好むこの筆者は一体何を専門とする先生だろうか?」「「絶対悪」という幼稚な概念は本当にポリコレなのだろうか?」

→これに関しては若干同意で田野先生の脇が甘いと思うが、ジェノサイドについては「絶対悪」と表現されても個人的にはそれほど違和感はない。

ナチスの話に中国共産党の話を引き合いに出されて何の不都合があるのか?」

→これは典型的であまりに幼稚なネトウヨ論法だろう。ある問題「悪」を論じているときに、別の「悪」を持ってきて批判するのは、「悪」の相対化以外の何ものでもない。田野先生が「中国共産党香港統治でいいこともしている」などと言っているなら別だが、そんなこと口が裂けても言うわけない。あと中国共産党民族差別を党是や国是としているわけでは全くないので、公式政策として組織的虐殺をしていたナチスとは同列にできない。例えば難民申請者を餓死させている日本ナチスと同列にしなければならない。

ナチスに何か一個ぐらい優れた政策があったとか、なにか凄い発明があったとか、仮にそういう事実があったとしてもナチス人種主義虐殺正当化しない。そもそも全く別の話の筈だからだ。」

→別の話ではない。そもそも別の話にされて一番憤慨するのはヒトラーナチス指導者たちだろう。しつこいほど繰り返すが、「優れた」とか「凄い」という価値判断含みの形容詞を、「ナチス」と並べてつなげて使うこと自体が非常に問題なのである。「ナチス」を主語にした場合、「必ずしも人種主義ジェノサイドを含意しない」という詭弁は、およそ狭い日本ガラパゴスネット空間しか通用しない。数年前に日銀の審議委員が「ナチス経済政策は正しかった」で(意図は一応ナチスに対して否定的もの)、国際的非難されたことを思い出してほしい。

ナチスが何か良い政策も打ってたとか、良い発明をしてたとか、それが何故ナチスの免罪になるのか。それらの事実はいくらあってもナチスの免罪に繋がらない。」

→くどいようだけど、「ナチス」と「良い」をつなげて書いて表現すること自体が、ナチスの免罪を(意図していないとしても)意味するので非常に問題なのである。やはり増田は「良い」という表現主観的価値判断だと反省できていないように思える。「ナチス政権失業者の減少によって国民的な支持を得た」と「ナチスは…良いこともした」が、文章として意味するもの全然別だということがわかっていない。

「以前からあった計画採用して成功したら、それは政権の加点でいいんじゃないの?」

「「プロパガンダ的な性格が強かったら得点ゼロ」ってどういうルールなの?」

→同じく、「得点」=「良いこと」かどうかも価値判断なので、やはり「ナチス相対的評価している」ことになってしまう。ただ田野先生の書き方は、「当時のドイツ国民はプロパガンダで騙されていただけで、具体的な政策で支持していたわけではない」と読めるので、これは少し問題だとは思う。

増田がどこかの大学教員だった場合、この書き込みがバレたら間違いなく大問題になって、下手すると失職だと思う。そういうことを書いているという自覚が足りない。

ちなみに元々の田野先生文章個人的にはいひとつだった。自分だったら、「良いこともした」を正面から否定するのではなく、「良いこともした」ように見える具体的な事例を取り上げて、それがいか人種主義戦争とつながっているのかを丁寧に説明すると思う。

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