■幸福度を追求したディストピアとしての「やすお」

https://comic-days.com/episode/3269632237330766632

ホッテントリに上がってるのに気づかずにさっき読んだが、ブコメで指摘のあったように、この「22歳時点で特別なコネのない平均的な能力の男女が強制的に奉仕型サイボーグに改造される」という政策が実現しかけた時点で国民の大半が国外逃亡し出生率が急落して国が滅びると思うので、発想は面白いが現実性には乏しいなと思った。

とはいえ「自分だったら『やすお』『はなこ』をこんな風に運用するのに」と考えたら面白くなってきたので書いてみる。

「やすお」「はなこ」の運用について（増田案）

• 「やすお」「はなこ」の改造については成人した男女本人の意志に基づく志願制とする。（他者による強制が認められた場合は刑事罰が課せられる）
• 「やすお」「はなこ」に志願した男女は、改造前の個人の希望を優先されつつ、好感・愛着を持たれやすい秀でた容姿への改造手術、温厚で献身的な人格への矯正、家事育児などのケアワークを中心とした技能のインストールが行われる。
• 上述の通り「やすお」「はなこ」には人格矯正措置が施されるが、改造前の個人が希望すれば、改造前の記憶や基本的な思考パターンについては他者に危害を加えない範囲での温存が認められる。
• 完成した「やすお」「はなこ」は希望した中で審査に合格した個人およびケア労働を中心とした登録済の法人へ派遣される。「やすお」「はなこ」本人に派遣先の選択権はないが、派遣先における「やすお」「はなこ」の人権は製造会社により保証され、オーナーには虐待などのない適切な運用が求められる。
• 「やすお」「はなこ」を利用した個人および法人の不法行為（「やすお」「はなこ」を法人の人件費抑制に用いる、製造会社の許可を得ない再派遣を行う、何らかの改造を施す、売買春に用いる等）については特に厳しく処罰される。
• 派遣先において「やすお」「はなこ」への虐待が認められた場合、「やすお」「はなこ」本体のブラックボックスに内蔵された通報装置が働く。当該「やすお」「はなこ」は製造会社によって速やかに保護され、オーナーは所持資格を剥奪される。再犯性が高く悪質な場合は刑事罰の適用もある。
• オーナーが「やすお」「はなこ」を必要としなくなった、また何らかの原因で所持資格を失った場合は返品や譲渡が認められる。この際に原則として「やすお」「はなこ」の派遣時の記憶は消去されるが、オーナー・譲渡先・「やすお」「はなこ」本体の3者の了承があれば例外として記憶の温存が許可される。
• 返品された場合の「やすお」「はなこ」については、稼働可能であれば再チューンナップ・再派遣となるが、修復不能/派遣不能なレベルまで損傷・劣化が認められた場合と、何らかの原因で本体が強く希望した場合は、適切なケアを行った上での安楽死処分が認められる。
• 相続問題やクレーム対策の観点から、改造の時点で全ての「やすお」「はなこ」には不妊措置が施される。
• ただし個人オーナーが強く希望した場合、適切な運用実績が認められれば、申請ののち「やすお」「はなこ」を擬似伴侶として登録し、また養子であれば持つことができる。
• 相続の観点から「やすお」「はなこ」を養子にすることは認められていないが、オーナーが生存する限りにおいては「やすお」「はなこ」は擬似養子として認められる。

「やすお」「はなこ」に改造される人間のメリット

• 改造された時点で全ての人間が美しい容姿、温厚な人格、ケアスキルを手に入れることができる。
• どのような形の派遣となるかは製造会社の一存となるが、全ての派遣において身元を保証され、オーナーから（法人の場合は顧客からも）の愛着と承認を得ることができる。派遣先で（元の漫画で主人公が「やすお」にしていたような）オーナーおよび顧客による人権侵害があればすぐに保護を受けることができる。
• 個人オーナーの愛情と信頼を得れば伴侶として認められ、実子ではないが子供を持つこともできる。
• 改造前の個人の経験によっては、改造前の記憶の消去はメリットにもデメリットにもなりうる。

「やすお」「はなこ」に改造される人間のデメリット

• 派遣に適した外見と人格への改造措置を受けるため、個人としての同一性は失われる。
• 不妊措置を受けるため実子を持つことはできない。
• 派遣先での身元が保証される代わりに派遣先を選ぶことはできない。
• 改造前の個人の経験によっては、改造前の記憶の消去はメリットにもデメリットにもなりうる。

「やすお」「はなこ」を持つオーナーのメリット

• 個人オーナーの場合、製造会社への申請さえ認められれば自分の好みの容姿の献身的な伴侶を得ることができる。
• 法人オーナーの場合、製造会社への月額報酬支払と適切な運用が認められれば、ある程度の能力が保証された眉目秀麗なケア労働者を得ることができる。

「やすお」「はなこ」を持つオーナーのデメリット

• 不適切な運用があれば「やすお」「はなこ」は速やかに製造会社によって回収され、オーナーは資格を失う。「やすお」「はなこ」に危害を及ぼす運用は許されない。
• 伴侶を希望する個人オーナーの場合、「やすお」「はなこ」と自身両方の血を引く実子を持つことはできない。（個人オーナーの遺伝子を持つ子供を養子とすることに関しては認められる）

「やすお」「はなこ」が運用される社会のメリット

• 人権の制限をバーターとした生存権の保護により、弱者問題が大きく改善される。
• おそらくオーナー側の幸福度は大幅な上昇が見込まれる。
• 法人の場合、人手の少ない労働市場の労働力および労働環境の改善が見込まれる。

「やすお」「はなこ」が運用される社会のデメリット

• 生身の人間と「やすお」「はなこ」の価値の逆転（企業の単純労働/ケア労働の雇用が「やすお」「はなこ」に偏重し、望まない個人まで「やすお」「はなこ」への改造を消極的に選択せざるを得なくなる）が起こり得る。
• 幸福度は元漫画よりは高くなるだろうが、出生率はおそらく下がる（ここは運用社会における生殖技術により大きく左右されると思われる。人工子宮、遺伝子治療、デザイナーズベビーが実用化された社会であれば、生身のオーナーが自身と「やすお」「はなこ」の間に子供を得る事が一般化し、逆に出生率が上がるかもしれない）。

ざっと思いついたのはこのくらい。

「『やすお』『はなこ』になるのは絶対イヤ」と思う人間が10割であろう元漫画を踏まえ、どのような運用であれば「これならば『やすお』『はなこ』になってもいい」と思う人が出てくるかを考えながら書いた。

「やすお」「はなこ」の人間時の家族や友人の処遇、リタイアした「やすお」「はなこ」の処遇などを考えるとまだまだ書ききれない部分が沢山あるがとりあえずこのくらい。

Permalink | 記事への反応(2) | 20:58

ツイートシェア