2019-08-29

商品貨幣論経験

私自身の経験に基づけば、商品貨幣論は小さな集団では確かに成り立つ。

無論、歴史的価値が生み出される経緯が商品貨幣論説明できるとは思わないが、貝貨のように債券として機能しないもの存在していたことも事実である

Twitterに書くには長すぎたので私の小学校高学年時代経験を書く。

私が小学校高学年の時は珍消しゴムトレード流行っていて、各々の価値基準に基づいたレートで物々交換が行われていた。

香りのついた練りけしをはじめ、フィギュアのような消しゴムや、機能性押しの消しゴムも人気だった。

私は牛乳キャップを使ってコマを作るのが好きだったから、よく消しゴムを買っていってキャップと交換してもらっていた。

しばらくすると牛乳キャップには何枚かで消しゴムと交換可能な程度の価値があるという認識が学年中に広がった。

交換用に消しゴムを買うのにもお金がいるので私は作ったコマ牛乳キャップ何枚かと交換しだした。

私のコマは人気で、私がより多くのキャップを欲したこともあり、一番多いキャップを出した人とコマを交換することにした。いわゆるオークションである

ところが牛乳キャップの入手手段は限られていたため、入札額にも限度がある。

すると持っている珍消しゴムを売りに出す人、新しいコマを買うために古いコマや作ったコマを売る人が現れ、牛乳キャップが珍消しゴムと交換する以外の価値を持つようになった。

元々コマに興味が無く、消しゴムに飽きた女子は好きな男の子牛乳キャップを独占的にあげたりしていた。

しばらくすると、コマ消しゴム牛乳キャップの形で保持する人が出始めた。学年内に流通しているコマ消しゴムは目新しい物の価値が高く、古くて見飽きた物は価値が下がる傾向があった。つまり飽きたなら価値があるうちに牛乳キャップに交換して持っておく方が良い。そうこうする内に消しゴムコマブームは去り牛乳キャップは交換券として機能しなくなったが、価値あるものと交換した牛乳キャップは誰も捨てなかった。

この時点で牛乳キャップのもの貨幣価値を持ったように思う。

月日は流れ、自作カードブームが来た。担任自分で作ったカードなら学校で遊んでも良いという発言をしたためである

UNOを皮切りに遊戯王デュエルマスターズなど当時はやっていた各種カードゲームを学校で遊ぶため、私含め工作好きな2、3人がパックを手作りしてキャップと交換した。

トレーディングカードゲームの類はある程度枚数が無ければデッキを組む楽しさが味わえないため、かなり苦心してカード大量生産した。パックで出たデッキ不要カードはやはり牛乳キャップトレードされ、各々デッキをくみ上げていた。なお、肝心の私は自分デッキ顰蹙を浴びない程度に自作できるので、得たキャップの使い道は殆ど無かった。

またしばらくしてカードゲームに飽きた私は、パックを作りつつも今度はルーレットを始めた。キャップ工作が廃れ、毎日給食から供給されたことで大量に増えて消費先のないキャップを、大量に消費してやろうという考えだった。段ボール画鋲で作ったルーレットでも中々中毒性があり、はまる人が出てきた。

大量にキャップを持っていた私はルーレット一回につきレートに応じたほんの少しの手数料を取って、掛け金の合計から足りない分は自分キャップを出すという形にした。これが恐ろしい発明だった。ルーレットは全員負けることが少なくない上に主催者である自分絶対一定手数料が入ってくる。キャップは消費するどころかどんどん増え、ジャンキーたちの要望により高レートルーレットの開催が増え、さらに儲かり、顧客は借キャップをし始めた。高利貸し融資を募る人、親が儲かることに目をつけてカジノを始める人が発生し、授業の合間の休憩時間教室狂気カジノだらけになった。

このあたりは最早脱線しているが、要は最初消しゴムの交換券でしかなかった牛乳キャップ消しゴムトレード文化の衰退に伴い、消しゴム価値を吸収し、それ自体価値を持った訳である

さらカジノという、価値を物の購入以外で消費する文化が発生したことで、価値の維持に消耗品必要なくなった(消しゴムコマ消耗品なので、交換券としてのキャップ価値を持ち続けるためには常に新しく消しゴムコマ存在する必要がある)。


まり結果として、物々交換➝金の交換券としての兌換紙幣貨幣)→金との交換の保証不要不換紙幣貨幣)と商品貨幣論実践されたように見える。これが私の経験である

小学生程度の知性でこのありさまなので、当然長い歴史の中で小さなコミュニティにおいて商品貨幣論過程貨幣価値を持つことは十分に考えられる。貝殻には装飾といった需要があったことを考えれば、貝貨牛乳キャップ過程で普及してもおかしくはないだろう。商品貨幣論でよく説明される金が扱いづらいか兌換紙幣が生まれたというような説明を用いずとも兌換紙幣が発生しうるという話でもある。


余談:

毎日給食供給されるキャップがあるにも関わらず、過度のインフレが起こらなかったのは、私のような銀行的振る舞いをする人やため込むのが好きな人がいてキャップをため込んでいたかである

カジノ時代になると、資金が付きそうになったギャンブラー銀行家が他人預金を使ってギャンブルをしたため、微妙信用創造的なことも行われていた

高利貸しがいる以上破産はするが、破産者には多少恵んでやるという暗黙の了解があったため、破産しても1、2週間程度で復活できた

・この経済圏小学校卒業間近に消滅した

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