それは会社が正規雇用をやめて、非正規雇用の人員を増やしているのと同じ理由である。
日本において、会社の意思で正社員をクビにすることは許されていない。一方で正社員の側は、いつでも会社を辞めることができる。だから会社は正社員をクビにしたいときには、クーポン退職金を提示して、お願いしますので自分から辞めてください、とお伺いを立てなければならない。要するに手切れ金を渡すから、代わりに辞めてね、とお願いするわけだ。
労働契約は労働力と金銭の交換なのだから、その交換が終わった時点で本来は恨みっこなし(債権債務が清算された)な状態のはずなのだが、そうはいかない。労働契約は最初から、片務的な解除条件を内包しているからだ。だから会社側の視点からすると、正規雇用は最小限にとどめて、非正規雇用の人員を増やすのが合理的である。
これは誰もが知識として知っていることだが、結婚という契約も同様に、解除条件が片務的に設定されていることは、あまり公にされていない。
自由意思による離婚は、双方が同意しなければ成立しない。つまり建前としては、双方が解除のオプションを手放していることになる。
民法第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
しかしこれは強制力を伴っておらず、罰則規定などもないし、正当な理由があれば同居を拒否することも出来る。DVなどが正当な理由に当たるのは当然だが、例えば単にケンカをして一方的に別居するような場合も、根本的な原因は夫婦間の不仲にあるとされるだろうから、その後の離婚裁判であまり不利になることはないだろう。
同居義務はあくまでも、「清く、正しく、美しく」的な建前に過ぎない。現実的には、夫婦双方が別居を選ぶというオプションを持っていると考えるのが自然だと思う。
別居となった時発生するのが、婚姻費用である。この金額は有責配偶者に認定されるかどうか、払う側(収入の多い側)と貰う側の収入の差、子供の有無などを含んで決定されるが、極めてシステマティックに見積もられる。その金額は5~40万円まで様々だが、重要なのは別居の要因とは関係なく、収入の多い側から少ない側へと、毎月決まって支払われる、返済不能な金銭であるという事だ。
金融の世界ではこのような商品を永久債と呼び、その理論上の価格は支払金額を市場金利で除した価格となる。市場金利の月利を0.2%としてその金額をざっと計算すると、ざっと2,500万円~2億円程度の価値を持つ。
まぁ人の命は有限なので厳密には「永久」債じゃないし、ソブリンリスク的なもの(例えば会社をクビになるとか)もあるだろうから、この金額はかなり高すぎるのだろうけど。でも慰藉料1,000万円が高すぎる訳でもないことはわかると思う。
さて、そうすると夫婦仲が悪くなった時、収入の少ない側にとっては、別居して婚姻費用をもらい続ける事が、離婚する事を上回る支配戦略になるだろう。確かに夫婦仲が良く同居している状態が、最も快適なのかもしれない。しかしいざ夫婦仲が悪くなって別居した時、圧倒的に損をするのは収入の多い方の配偶者なのだ。そしてその時に離婚を相手に同意させるのは、相手から(手渡した覚えのない)永久債を奪うのと同じくらい難しいだろう。
例えば30年前は、給料も今より少なかっただろうから、婚姻費用として支払われる金額もきっと今よりも少なかっただろう。その一方で、市場金利はきっと今よりもずっと高かったはずだ。今でもベトナムなどでは、定期預金の金利が5%を超えるのは普通である。この両者の変化は、永久債の理論価格を下げる働きをする。
解雇規制を緩和して、婚姻費用を別居期間に応じて減らすようにすればよい。
何も解雇規制をゼロにする必要はないし、婚姻費用をゼロにする必要もない。婚姻費用が必要な理由として、一度離職した後、再就職先が見つからない事があげられるのなら、それは解雇規制が大きな原因なのだから、両方をセットにして施行すれば、成長戦略としてはこの上ないものになるだろう。そのうえ人口減にも歯止めがかかるかもしれない。
でもこの簡単な解決法はきっと、多くの国の最大の票田(40代以上のサラリーマン+専業主婦)である既得権益層を敵に回すことになるので、政治的に実現はとっても難しいだろう。
Occupy wall streetを見ればわかるように、非正規労働者の待遇に対する不満は、企業へと向けられることが多い。しかし本当の意味で彼らの取り分を減らしているのは、窓際に座っている正社員のおじさんである。
Bridget Jones(ブリジット・ジョーンズ)はCommitment-phobia(結婚に踏み出そうとしない)の男性をやり玉にあげていたが、本当の意味で彼女が怒るべき相手は、パーティで結婚はまだなの?と迫ってくる口うるさいおばさんなのかもしれない。
ただの不仲で一方的に別居したら普通に不利になりますがな。 あと別居が続けば離婚要因(夫婦として既に破綻している)となるので、永久に婚姻費用が発生するってのは有り得ない。 ...
いや、お前を含めた「みんな」は 単に結婚相手がいないだけだろ。。。言い訳すんなよブサイク
このレベル。
結婚する人が減ったのは「将来に不安を覚える人が増えた結果、少しでもリスクを回避しようとする人が増えたから」では? 10年後20年後、日本が今と比べてどうなっているか誰でも想像...
横だけど、その回避したいリスクの1つが、片務的な契約そのものなんじゃないの・・?
企業の儲けのほとんどが社員に還元されず、株主にいってる点にも触れようね
「みんなが ○○った 本当の理由」 って記事は読む価値がないって、昨日誰かが解説していた気がする。。。
法律というのはね、そもそも、 立場が弱い物の側を守る様に出来ているわけ。 放っておいたら、立場が強い物が、 なんでもかんで自分の都合の良い様にするでしょ。 それにブレー...
これ、ちょっとブクマ付いただけでスルーされたと思ってたのに突然炎上していて驚いた 最後の行の意味誰か解説してー
あんま本筋と関係ないが… 誰が言い出したか知らんけど「日本では正社員の解雇が許されてない」ってのは本当に巧妙なレトリックやな 確かに許されてない(制限されてる)わ。法的...
解雇は絶対悪、みたいな前提で語ってるのが謎すぎる。 解雇の何が悪いんだ?
「絶対悪」って「前提」で語ってるか? 日本では解雇は事実上規制されてないって言ってるんじゃ?
「解雇と戦う」とか、「えげつない」とかいう表現が自然に出てるからな
恋愛至上主義になったから結婚できないんじゃないの…?経済的に問題なくても結婚できない人多いと思うんだけどなー….