2012-05-17

深夜アニメ層を呼び寄せておきながら非難する監督と、もっと酷いヤツ

 先日、有名女児向けアニメシリーズ監督が、同作品のわいせつコラージュの流布を自粛することを求めたことが話題となった。問題のコラージュは成年層の視聴者作成したもので、画像投稿掲示板イラスト投稿サイトを中心に出回っている。同コラージュ見た閲覧者や、その存在を知った一般の視聴者の親が、同コラージュが実際の放送で流されたもの勘違い番組放送局に苦情が寄せられたために、監督自らが自粛を呼びかける事となった。監督は自身のツイッターアカウント上で、

「放送した映像の静止画を描き変えたりコラージュして、インターネットに流すのはやめてほしいです。 本当に放送されたもの勘違いして苦情が来たりして困っています。それに考慮して本編制作の際に

本来は不要規制を強いられる場合もあります。あと単純に、気分のいいものではありません。インターネット不特定多数、全年齢の方が見ることができます。作品を楽しんで頂けるのは嬉しいのですが 子供向けのアニメ番組ですのでその点のモラルを何卒よろしくお願いします。監督として微力ですが、 来週も楽しいものを放送していきたいと思っています。 」

と発言し、コラージュ作品の発表の自粛を求めた。

深夜アニメ手法女の子キャラクターを撮っているのが問題の発端

 いまや子どもインターネットを手軽に利用することができる時代であり、放送を見た女児猥褻コラージュを目にしてしまう可能性がある。そのため作成自粛を求めるというのは一見筋の通った話である。問題のコラージュが既に衆目に触れる形で流通していることを前提にした、適切な応急措置であるといえよう。

しかし、問題の本質は、そもそもなぜ女児向けアニメ映像わいせつコラージュの標的にされてしまうのかというところにある。性の対象とされてしまうような画を生み出してしまう作り手の側に問題の根っこがあるのではないか。確かに、問題となったシリーズに限らず、女児向けアニメというものには多かれ少なかれわいせつコラージュ存在している。しかしながら、今回問題となったシリーズばかりにわいせつコラージュが集中し、同時期に放映されている他の作品はそうでもなかったののはなぜなのか。過去女児向け作品ではこのような問題は顕著でなかったのに、同シリーズがこのような問題を発生させたのはなぜなのか。そこに考えが至れば、アニメに対して性的見方をする視聴者層をも取り込まんとする作り手の作為が見えてくるはずだ。等身が高く体のラインを強調したキャラクターデザイン男性視聴者視点にたったようなアングル、男キャラクターを排除した世界観、そういった諸々の要素をかんがみれば、アニメに対して性的見方をする深夜アニメ視聴者層も念頭においた作品作りをしているという謗りは免れ得ないだろう。

シリーズ女の子キャラクターを描写する手法は、深夜アニメが女キャラを映すやり方にのっとっているといってもよい。お色気要素を省いただけだ。深夜アニメの文法で女児向けアニメ制作していると言っても過言ではない。わいせつコラージュを大量に流通させてしまう脇の甘さは、その点についての無自覚に由来しているのである

シリーズにかぎらず、昨今の女児向けアニメには、深夜アニメ視聴者層迎合するような作りをしたものが多々ある。作り手が深夜アニメを作っているようなノリで作品に取り組んでいるというのが問題の本質なのだ。ちなみに、同シリーズの対象視聴者層には二十代から三十代の男性も入っているらしい(作品概要パンフレットより)。そういった態度で作品作りをしておきながら、ひとたびわいせつコラージュが作られるや、「不快です自粛して下さい」というというのは、自身がどういうモノづくりをしているのかという自覚に欠いているのではなかろうか。

もっとひどいのは深夜アニメのノリで女児向けアニメを作るヤツ

と、ここまで某有名シリーズを枕に話を進めてきたが、これとは比べ物にならないひどい番組作りをしている女児向けを謳った作品があるのをご存知だろうか。テレビ東京サンリオの手による「ジュエルペットサンシャインであるSM連想させるキャラクターを登場させることに代表される番組随所に見られる性的モチーフの多用、深夜アニメオタクしかからないようなパロディの連発、スタッフ内輪ネタの挿入など、そのモノづくりの姿勢女児に向けたものではなく、深夜アニメ視聴層に向けられている。某有名シリーズ深夜アニメの文法を利用したにとどまるのに対し、今作品は深夜アニメのノリで朝の女児向けアニメ制作しているのである最終回付近になると更に理性のタガが外れたようで、登場する女の子キャラクターをあられもない格好にさせた上えげつない言動までとらせている。

これら男性アニメオタクの劣情に訴えかけるような要素が、深夜アニメではなく朝の女児向けアニメに挿入される必要はまったくない。にもかかわらずあえて挿入されているのは、スタッフ自己の劣情を女児向けアニメ投影たからに他ならない。こんな作品作りをしたモラルに欠くディレクター稲垣隆行は論外であるが、問題のシーンを流すことを決定した放送局側にも看過できない重大なミスがある。テレビ東京サンリオプロデューサーはなにを考えて、いわば”お色気要素”のある女児向けアニメ製作しようなどと思ったのだろうか。ともあれ、自覚してやっている分、某有名シリーズなどよりも罪は重い。

まとめ

 以上見てきたように、深夜アニメをつくるような態度で女児向けアニメが作られているのが現状である。その結果、女児向けアニメ不要な、お色気的要素や男性視聴者向け視点という冗長性が加わっている。これがわいせつコラージュという反応で返ってきて、これを見た本来の視聴者層やその親に衝撃を与える。そして親から苦情がよせられ自粛を余儀なくされるというのが今回の問題の仕組みである。下劣なわいせつコラージュ作成者を非難しても始まらないのだ。まず自らが作品作りの態度を改めるところからはじめなければ。

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