はてなキーワード: 美化語とは
「うまい」(旨し(古語))は、「甘い」を語源とする一般的な食べ物の「良い味」を意味する言葉で、「うまい」というのは特に下品な言葉でもなければ失礼でもありません。本来、現代でも普通に使われて良い言葉です。
対して、古語「美し(よし)」を語源とする女房言葉だった(「よし」→「いし」に、美化語である「お」が付いた)「おいしい」は、その発生から「女性が使用して上品に感じさせる言葉」としての歴史をもっています。年配の方の一部では、女性語と受け取る人もいます。
つまり、女性による「うまい」の使用がやや乱暴に感じられるのは、一般的に用いられる女性語としての「おいしい」をあえて選ばなかった、という言外の意味が生じるように受け止められるからでしょう。一方で、「おいしい」を女性語と感じない(単なる「ちょっと丁寧な言葉」と思う)人が増えた結果、「どうして女性が使うと下品に聞こえるのか」が分からなくなった、というのが今回の文脈ではないでしょうか。
なお、明治の文豪等は、そもそも食べ物の味について云々すること自体をケシカランことと思っていた節もあるようですが、それを表現する際には、地の文や男性語としてはおおむね「うまい」が選ばれていたようです。その後の用例をみると、明治末ごろから大正にかけて、女性作家や児童文学作家などの文章に普通に「おいしい」が用いられるようになっており、その辺り(時代、場所)から男女問わず用いられる今日の「おいしい」の用法が広まったのではないかと推測されます。昭和に入ると、特にカジュアルな口語的表現において、男性の場合も「おいしい」を使う例が増えているようですね。そこでは「うまい」はやや古風な表現という受け取られ方をしているようで面白いです。