2023-09-01

ADHDという「罪」の話

私は20歳の時にADHDと診断された。

 

 

物心ついた時から忘れ物が多かった。

小学生の頃、私のクラスでは誰がどれだけ忘れ物たか可視化されていた。

クラス全員の名前が書かれた表があって、一回忘れ物をしたら赤いシールが一枚貼られるというシステム

シールがいっぱいになったら、赤の上から青いシールを貼られた。

他のクラスメートが多くても青で一年を終えるのに、私は赤→青→紫→ピンクと表を4周していた。

帰宅後すぐに翌日の用意をして、夜寝る前と朝起きてから再度確認するようにしても減らなかった。

 

遅刻癖がなかなか治らなかった。

余裕を持って準備をしていたはずなのに、いつも家を出るのはギリギリ時間になった。

原因がわからなくて、「だらしない」と言われるのが本当に恥ずかしかった。

 

 

ADHDという診断をもらって、原因がわかったことでいくらでも対策を立てられるようになった。

例えば、スマホの充電を忘れてしまとき

モバイルバッテリーをいくつか買って、バッグの中にたえず充電満タンのものが一つあるという状況を作るようにした。

何かの準備をする時はまず自分必要もの手書きメモし、声に出しながら支度をすることで忘れ物が激減した。

昼近くに出勤できる仕事を選び、始業時間の2時間前に会社近くに来るようにタイムスケジュールを組んだら遅刻がなくなった。

どうすれば他の人に迷惑をかけずにすむか、かかりつけ医相談したり周りの人に協力をお願いしたりして、何とか生活を送れている。

正確には、送れていた。

 

 

少し前、12時出勤だったのに13時出勤だと勤務表を見間違っていた日があった。

今の職場に勤めはじめて7年、初めてのことだ。

前述のとおり2時間前には近くにいるので、連絡を受けてすぐ出勤した。

確か着いたのは12時5分のことだったと思う。

遅れてしま申し訳ありませんと上司・同僚に謝罪した時、同僚のAさんが言った。

 

「これだからADHDの人は困る」

 

頭が真っ白になった。

Aさんは、あるスポーツテレビ中継が深夜にある翌日は必ず遅刻していた。

職場の中でもそう認知されていて、「Aさん来ないね」「昨日オリンピックだったから」みたいなやり取りがあるような人だった。

社会人としてどうなんですか」と苦言を呈する後輩がいても、「そんなこと言ったらダメだよ」と庇われるのがAさんだった。

  

でもAさんに言われた時、私を庇ってくれたのは前述の後輩だけだった。

「Aさんの遅刻は許されるのに私さんの遅刻は許されないのはおかしくないですか」と後輩が言った時、Aさんは「だって私さんはADHDもの、許されちゃいけないんだよ」と返した。

診断をもらって数年、初めて後悔した。

いくら普通の人と同じになる努力を重ねても、たった一度ミスをしてしまうだけで発達障害は責められるのだと痛感した。

初めて、健常者が「ずるい」と思った。

 

私は今も同じ職場で働いている。

Aさんも定期的に遅刻してくる。

それでも、Aさんを責める人は誰もいない。

私は「あの人ADHDで忘れっぽいから気をつけてね」と新人に毎回言われるようになった。

ADHDは、それだけで罪らしい。

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