彼女のファンだと言ってしまうと、彼女に対してお金と時間をかけている人たちに怒られてしまうだろうが、彼女が出るからと言って紅白を見た程度に彼女のことが気になっている。
私は彼女を3曲でしか知らないが、そのどれもが彼女が、とてつもない存在であることを示していると思う。
俺は、歌い手が性別で分かれて対抗戦をするという昭和のフォーマットがクソほどダサいと思うが、この時は彼女の存在によって紅白が「昇華」ないし「成仏」したと思っている。きっと紅白が始まって以来の歴史的なステージで、かつ、今後も仮に紅白が続く限りにおいて語り継がれるべきものだと思う。
紅白という場において、会場だけでなく、オールドスクール系の演歌歌手を含めた出演者にレインボーフラッグを振らせた演出は最高だった。勿論演奏も最高だ。紅白はあの年で終わりにしていたら、古いものに縛られる我が国にとってどれだけよかっただろうと本気で思う。
アニメ映画の準主役の吹き替えで出演していた彼女は何曲か歌うのだが、クライマックスシーンで歌うこれが圧巻である。元はスティービーワンダーで、元の映画では確か、あちらの有名な歌手が歌っている。その歌手の名前は忘れたが、今さら思い出したり、この文章を書くためだけに調べ直す必要もないと思ってる。なぜなら両方聞いたが、圧倒的にMISIAの方が優れているから。
俺がラッキーだと思うのは、MISIAが歌う日本語の歌詞を母国語で理解し、共感できる事だ。この映画に関しては、MISIAの曲に関わらず、原語からの訳詞に手間を惜しんでおらずクオリティが高い。確か、宇多丸がどこかで喋っていた。話は逸れるが、村上春樹の小説を日本語で読み、日本文化の文脈の中で理解して共感できることもラッキーだと思っている。話はそれたがつまりそれくらい良いということである。
この曲は本当に凄い。俺はマライアキャリーについてあまり知らないが、日本語が母国語である俺がマライアキャリーを聞いた時に感じる感動よりも、俺がMISIAのエブリシングを聴いた時の感動が勝ると自信をもって言える。ボーカルってのは、他の楽器と違って、言語と直結してて、単なる音楽を飛び越えて文学だとか心理だとかに繋がるものだと思うんだ。そう感じさせる説得力を持った歌い手は少ないと思う。