コンロンはため息をつき、座ったまましばらく頬杖をついて机を見下ろしていた。これから何もかもどうなっていくのだろうかと彼は考えた
ーー石油会社の鉱床探しに雇われた大勢の振り子占い師たち、遅まきながらということで大学に設けられた「超常現象」学位、かつては立派な科学出版物だったものに現れはじめた変人どもの論文、もうすぐピラミッドから無限の「宇宙エネルギー」が得られるようになることを確信して核融合研究費の削減を要求する政治家ーー
折も折、合衆国は日本から最新型のトカマク反応炉を輸入しなくてはならなくなっている。
優秀な技師や技手を見つけることはほとんど不可能になってしまった。科学や工学や技術などの専門職
ーー事実上、努力と忍耐と勤勉さを要求されるようなものは何でもーー
は、どうやら若い世代にとっては野暮くさく、とろいやつのすることと考えられはじめているようだ。
それに訓練を受け、経験を身に付けた若者は、すぐにもっとやり甲斐のある方面へ転進をはかり、より有利で挑戦の機会がある海外へ出ていこうとする。
日本、中国、インド、アフリカといったそうした地域に住む人々は、現実と顔をつきあわせてきた長い歴史のおかげで、どういう意味にしろ「自己発見」の概念だとか「神秘的な至福の探求」といったものに惑わされずにすんだ。
そして二十一世紀に遭遇したとき、彼らは何も解決してくれない魔法や迷信への信仰をすばやく放棄し、今やその地に進歩し工業化した高度技術文明の礎を築くべく、営々と立ち働いているのだった。