死んだ飼い犬が闘病中だとうそをつき、治療費名目で支援金をだまし取ろうとしたとして2022年4月、奈良地裁葛城支部で26歳の女が有罪判決を受けた。女はインターネットで資金を募る「クラウドファンディング」を悪用。診断書などを偽造し、心配する愛犬家ら370人以上からお金を集めた。善意を踏みにじる行為の背景には、急成長するCF側のチェック体制の限界も見え隠れする。
女が死んだ飼い犬を闘病中と偽り、治療費を集めていたCFのページ
プロジェクト開始前に死んでいた
「時間がありません。たすけてください!」。21年10月、奈良県大和高田市に住んでいた女は、重篤な心臓病などを患うフラットコーテッド・レトリバーの愛犬「斗偉(トイ)」の写真とともに支援を募るプロジェクトをCFサイトでスタートした。
女が利用したのは購入型CFと呼ばれる種類でCFサイトを通じて支援者から資金を募り、お礼に商品やサービスを返す仕組みだ。
血液検査の結果や、診療費の明細書、エックス線写真……。女はCFサイトに“証拠”となる書類の画像を多数アップし、トイの闘病記録を克明につづった。
だが、プロジェクトを始める2カ月以上前にすでに死んでいた。にもかかわらず、女は診断書の日付を改ざんするなど小細工し、「病と闘う愛犬とその飼い主」を演出。手術代や検査費用に充てるとして最終的に計180万円の治療費の支援を呼びかけた。
反響は大きかった。「わが家も愛犬がいます。応援します」――。ペット愛好家らの応援コメントは400を超え、同12月には374人の支援者から計約184万円が集まった。
うそが発覚したのは、トイが死んだことを知る関係者からの通報だ。女は支援金を手にすることなく22年1月、詐欺未遂容疑で奈良県警に逮捕され、同罪で起訴。奈良地裁葛城支部は4月、「金目当てに支援者の犬を思う心情を逆手に取った悪質な犯行」として懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/19/news086.html