2021-08-28

生殖の意義を真面目に説明する。

 ゾウリムシという単細胞の原生動物存在する。

 この生物単細胞だが、性別(EとO)が有り、異なる性別個体同士で生殖を行なう。具体的に言えば、異なる性別のゾウリムシ同士がペタリとくっ付く。

 ゾウリムシの細胞内には、2つの細胞核(大核と小核)が有る。

 大核は、普段生命活動必要mRNAの転写以降のプロセスに関わる。

 小核(染色体数は2n)は、生殖の際に減数分裂を行なって2個の生殖核(染色体数はn)を形成し、そのうち1個を生殖相手に与える形で相互に交換する。

 生殖が終わると、2匹のゾウリムシは離れる。この時、ゾウリムシの細胞内には2個の生殖核、自分由来のもの(染色体数がn)と相手由来のもの(染色体数がn)が存在する。これが融合して新しい細胞核(染色体数が2n)になる。

 融合した生殖から、やがて新たな大核と小核が形成されて、古い大核は分解消失する。新たな大核は、再び普段生命活動のために機能し(なお、染色体数は2nよりも大幅に増える)、小核(染色体数が2n)は次の生殖まで遺伝子を保存し続ける。

 ここまで読まれた人は「あれ?生殖前後個体数が変化していないのでは?」と思われたことだろう。そのとおり、生殖する前のゾウリムシは2匹で、生殖した後のゾウリムシも2匹である。それについて、今から説明する。

 生殖を終えたゾウリムシは、一定期間は生殖が出来ない未熟期の細胞である

 それが、細胞分裂をある程度の回数行なうと、成熟期の細胞になり、この時には生殖可能である生殖を行えば、もちろん再び未熟期の細胞になる。一つの細胞が分裂する時には、大核も小核も分裂して娘細胞コピーが受け継がれる。ただし、大核の方は普段生命活動に支障さえ無ければオーケーなので、コピーはかなりアバウトである。大核の染色体数が大幅に増えるのは、このアバウトなコピーのためである

 細胞分裂を繰り返して成熟期の細胞になっても、もしも生殖しなければ、そのまま細胞分裂だけを繰り返して、やがて老齢期の細胞になる。老齢期の細胞生殖ができない。この後、寿命を迎えて死ぬ(細胞崩壊する)。生殖しないまま細胞分裂を繰り返せば、それは同一の遺伝子を持つクローン単細胞の集合である

 ヒトを含めた多細胞生物を元に考えると、生殖イコール増殖と勘違いしがちであるしかし、ゾウリムシのような単細胞生物を元に考えれば、理解やすいだろう。生物個体数が増殖することの本質は、細胞分裂である。もしもヒトを含めた動物精子卵子を作るのが、生殖の時の1回だけだったならば、世代を経る毎に個体数が減少していくことだろう。もちろん現実はそうではない。精子卵子複数回作る(複数個の生殖子を作る細胞分裂を行なう)ことが出来るからこそ、多細胞生物個体数は増えることができるのである

 そして生殖というプロセスは、異なる個体に由来する生殖子(ゾウリムシならば生殖核、ヒトのような動物ならば精子卵子)を交換・融合させることで遺伝子シャッフルするとともに、細胞を若返らせる。若返ることで、細胞は分裂できるようになる。すなわち、個体数を増やせるようになる。

 遺伝子シャッフルは、子孫が同一の遺伝子しか持たないクローンの集合になってしまい、環境変動に対応出来ないなんて事態を避けるという意義がある。

 まとめると、生物個体数を増やすためには細胞分裂が必要であり、その細胞分裂を行えるような細胞であるためには、生殖という遺伝子シャッフルと若返りのプロセス必要とするということである

 ちなみにゾウリムシの細胞成熟する時期を知るためには、細胞分裂の回数を数える必要がある。それには、顕微鏡を観察しながら1匹(1個の細胞)のゾウリムシを採取して試験管に移し、細胞分裂して2匹になったら再び1匹を採取して移し、……という地味な作業を繰り返す。詳しく知りたい方は、図書館などで『性の源をさぐる』『ゾウリムシの性と遺伝』等の本を検索して読むと良い。

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